勤務先の「違法行為」を知ったらどうすべき?通報者も企業も守る「公益通報者保護法」を解説
◆2022年6月から内部通報制度の整備が“義務化”に
公益通報者保護法の一部が改正された際“事業者に対する義務”も加えられました。改正された法律について、安達さんは「従業員が301人以上の企業や法人に対して、従業員などからの不正に関する通報に適切に対応するための体制、いわゆる“内部通報制度”を整備することが義務づけられました。具体的には、従業員のために内部不正通報窓口を設置すること、通報に対して調査すること、また、通報で発覚した違法行為を止めることです」と安達さん。 企業の内部通報制度の整備は、2022年の6月から義務になっています。また、従業員数300人以下の中小事業者の場合は努力義務となっています。ところが、帝国データバンクが2023年10月におこなった調査によると、従業員が301人以上の企業で、「体制整備義務に対応している」と答えたのは約6割。なんと4割の企業は、義務にも関わらず、まだ対応していない状況です。 改正された法律では、体制整備義務に違反している企業や法人には、消費者庁が行政措置をおこなうことを定めているため、「助言や指導、勧告をおこない、それに従わない場合は、その旨を公表します」と注意を促します。それでも対応していない企業が約4割も存在する理由について、「いろいろあると思いますが、1つは、まだ体制を整備する必要性がよく理解されていないのかもしれません」と安達さん。 さらには、「公益通報者保護法が求める内部通報制度とは、企業自らが内部の不正を早期に発見・是正して取引先や消費者からの信頼を守り、その結果、企業と従業員を守る制度です。従業員が不正行為を通報しやすいように専用の窓口を設け、不正行為に関する通報に対して調査・是正する体制の整備が必要です」とも。 消費者庁では、まだ対応していない企業は急いで体制を整える必要があるものの、何から始めていいのか分からないといった企業を支援するために「内部通報制度導入支援キット」と名付けて、内部通報制度の導入に役立つ資料や動画を一式作成し、昨年12月に消費者庁ウェブサイトにて公開しています。 導入支援キットには、企業が策定しなければならない「内部通報への対応に関する内部規程」や内部通報受付時に使用する「通報受付票」のサンプルが用意されているほか、経営者向け動画では、内部通報制度の導入意義や手順を5分程度で解説しており、従業員の研修に利用できる動画もあります。 また、改定されたルールのなかでも、特に重要なルールについて言及。それは、従業員からの内部通報に対応する担当者の守秘義務で、「事業者は、内部通報窓口を設置すると同時に、通報の受付や調査をおこなう担当者を『従事者』として指定する必要があります。この従事者は、当然、通報者が誰かを知り得る立場にあります。通報者が誰であるのか、決して、その秘密を漏らしてはいけません」と強調します。 なお、違反した場合は、その従事者個人に対して30万円以下の罰金が科されます。これは、企業の義務違反ではなく、あくまでも従事者個人の義務違反なので、罰も従事者個人が負うことになります。直接名前を漏らさなくても、通報者を特定させるような情報を漏らした場合も義務違反となるため、注意が必要です。 最後に安達さんは、「消費者庁では、お勤めの方が職場で『何かおかしい』『職業倫理に照らして間違っている』と思うことがあったら、組織や経営者に対しても声を上げることを推奨する企業文化の醸成を促しています。経営者の皆さまには、企業と従業員を守るためにも内部通報制度を導入し、従業員の方々に『ぜひ、声を上げてほしい』と積極的に呼びかけていただきたいです」と話していました。