野村克也が語る「阿部慎之助」
引退以上にもったいなかった4年前のファースト転向
今季限りで引退する阿部/写真=小山真司
巨人・阿部慎之助が、今季限りの引退を発表した。 あれは、2年前だったか。38歳で通算2000安打を記録した阿部に対し、「50歳までプレーして、俺の2901本を抜け」と、ラジオの解説でメッセージを送った。 阿部のバッティングは、天才型。天性の才能だけで、打っている。つまり、真っすぐを待っていて変化球にも対応できる。言い替えれば、『理想型』である。 そのため、彼は「キャッチャー・阿部」と「バッター・阿部」が別ものだった。キャッチャーとしてマスクをかぶれば頭を駆使して相手バッターを分析し、リードを考える。ところがバッターボックスに入ったとたん、キャッチャーとしての考えはどこかに行ってしまうのだ。これが私には、まったく分からない。あの天才型のバッティングに、配球の読みを加えれば、軽く三冠王だって獲れるだろうに。もったいないことをしたと思う。 しかし、阿部について、私が最も「もったいない」と思ったのは、彼がキャッチャーをやめて、ファーストに転向したときだった。あれには心底ガッカリした。日本シリーズを経験し、1球の怖さ、重さを、身をもって知った。そこでキャッチャー・阿部は、大きく成長したはずだ。本人もキャッチャーの醍醐味を楽しそうに語っていたというだけに、なんとももったいない。 コンディションの問題とも聞くが、プロ野球でキャッチャーをやっていれば・・・
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週刊ベースボール