「将来の夢はユーチューバー!?ふざけるな!」親と子の理想の職業はなぜひたすらすれ違う?
YouTubeの人気が急上昇し、小学生は、将来なりたい職業として「ユーチューバー」を挙げるようになった。一方、大人世代はその“夢”に眉をしかめる。時代に合ったキャリアの選択肢をどう捉えるべきなのか。※本稿は、橋本之克氏『世界最先端の研究が教える新事実 行動経済学BEST100』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 特別な資格なんていらない 子供の夢はユーチューバー ユーチューバーとは、動画共有サービス『YouTube』に動画をアップロードして、その動画につく広告を収入にしている人です。ユーチューバーになるための資格試験などはありません。まずはGoogleアカウントを取得して、動画をアップロードしていけばいいのです。 ただし、広告収入を得られるような認定を受けるためには、自分のチャンネルで公開している動画の合計視聴回数が1万回に達する必要があります。自分の動画に挿入される広告を視聴者が見て、クリックすると広告収入になります。もし有名になれば、企業とのタイアップで直接企業から収入を得るなど、仕事や収入の幅が広がります。 このユーチューバーが、小学生が「将来就きたい職業ランキング」(2022年9月学研教育総研調査)で、1位パティシエに次ぐ2位となりました。3位以下の医師、警察官、プロサッカー選手を上回る順位です。 同調査では2016年まではベスト40にも入っていなかったのですが、その後に急浮上し上位の常連となっています。 ユーチューブに親しんでいない高年齢の世代にとっては、驚くべき事態のようで、様々なメディアに取り上げられていました。さて、果たしてこれはおかしなことでしょうか? まずこのような「ユーチューバー人気」について考える前に、背景となるいくつかの事柄を理解しておく必要があります。
● YouTube拡大の勢いは止まらない 視聴者はユーチューバーを見たい 第1にYouTubeというメディアの力がこの数年、急激に強まっています。デジタル社会となり、ネットで動画コンテンツを見るためのインフラやデバイスが進化し普及しています。スマホでいつでもどこでも動画を視聴するのが、ごく自然な行動となりました。その際、コンテンツも豊富で気軽に視聴できるYouTubeは最適なメディアです。 視聴者数もコンテンツ量も巨大化しています。国内の月間ユーザー数は、2023年時点で7120万人を超えました。世界全体では約27億人が利用しており、1日当たりのコンテンツ視聴時間は10億時間に上ります。またコンテンツ量に関しては2022年の時点で、1分間あたり500時間以上アップロードされています。つまり1時間あたり約3万時間の動画が投稿されていることになるのです。 番組の内容は、まったりしたものから、非日常感のあるもの、自由奔放に弾けたものまで様々です。制作編集に費用をかけられないため企画の面白さが勝負です。コンプライアンスに縛られるようになってしまったテレビと比較して、面白いと評判の番組が多くあります。 第2に、ユーチューバーが動画選びの目印になっています。 YouTubeを中心に動画サイトは多数あり、日々大量の動画がアップされ蓄積されています。視聴者は膨大な数の動画群から、自分が楽しめる動画を選ぶ必要があります。多過ぎて探せない場合は、動画紹介サイトや知人がシェアする情報が役立ちます。