トランプ次期大統領の「つぶやき為替介入」警戒すべきタイミングとは?
トランプ次期大統領の打ち出した経済政策で、再び強い米国経済が戻ってくることに期待が高まっています。その象徴ともいえるのが、最近のドル高傾向です。しかし、その海外からの高い評価はトランプ新政権にとっては皮肉な結果となっているようです。 来年の1月20日までには、なんとか急激なドル高を収束させたい様子を見て取れるのが、トランプ氏の「つぶやき」です。このつぶやき、為替にどの程度、影響をおよぼす可能性があるのでしょうか? 第一生命経済研究所、主任エコノミストの藤代宏一さんが解説します。
ドル高の背景にある「リパトリ」とは?
大統領選後、ドルの総合的な実力を示す実効レートが著しく上昇し、目下のところ、ドルインデックスは13年ぶり高水準に位置しています。トランプ共和党の掲げる一連の経済政策が米経済の成長率を押し上げるとの見方が強まっているほか、「リパトリ」という資金フローが意識されていることが背景にあります。 リパトリとは、企業が海外現地法人に溜め込んでいる利益を本国に還流させる取引のことで、今回はグローバル展開する米国企業が米国に資金を戻す際に大量のドル買いが生じるのではないか、ということが意識されているようです。トランプ共和党は海外留保利益を本国に還流させる際にかかる法人税を時限的に10%に引き下げるとの政策を打ち出しており、米国への資金回帰を促しています。 ちなみにこの政策はHomeland Investment Act(HIA)と称されており、日本語では本国資金回帰法などと呼ばれています。
ありがた迷惑な円高 トランプ次期大統領の「つぶやき介入」のタイミングとは?
こうしたドル高傾向は、次期政権の経済政策に対する期待感の表れといわれますが、皮肉なことに目下のドル高はトランプ次期大統領にとっての懸念事項になっているはずです。ドル高による製造業の業況悪化は、ブルーカラー層の不満を通じて政権発足後の支持率低下に繋がりかねないため、トランプ次期大統領は1月20日の大統領就任までに、この状況を変えたいところでしょう。このままドル実効レートが一段と上昇して13年ぶり高値をさらに更新するようだと、そうした話題は市場関係者のみならず、多くの人々の知るところになります。こうした局面では当局がドル高をけん制すべく口先介入を実施するのが通常ですが、現政権はレームダック化しており、もはや為替にさほど関心を寄せないとみられます。 そうしたなかで注視すべきはトランプ次期大統領の「つぶやき」です。トランプ次期大統領はSNSを頻繁に活用し情報発信をしていますが、大統領就任までは比較的自由な立場で主張を展開するとみられ、為替市場にけん制球を投じる可能性が考えられます。徐々に慣れてきた感があるとはいえ、あの強い口調でトランプ次期大統領がドル高をけん制すれば、金融市場で大きな話題となることは間違いありません。トランプ次期大統領の「つぶやき介入」が市場を動かす展開には注意したいところです。ドルインデックスが高値を更新した際など、ドル高が話題となるタイミングでは警戒感を強めるべきでしょう。