肉まんは「ほかほか」より「アツアツ」 Z世代に響くオノマトペは
「オノマトペ」は、大きく3種類に分けられる。1つは物事の状態を表す擬態語(たっぷり、つやつやなど)、そして音を表す擬音語(カリカリ、シャキシャキなど)、3つめが人や動物の声を表した擬声語(ワンワン、ニャーニャーなど)だ。日本では以前から、味や風味などおいしさを表現する際に「オノマトペ」を使い、食品の説明や商品名にすることで売上げにも影響が出ると考えられる。またオノマトペにも流行があり、時流に合うオノマトペが生まれる。オノマトペ以外にもおいしさの表現には世代間ギャップがあり興味深い。 ※Z世代の動向を伝える過去コラムはこちらZ世代の「理想の朝食」は利便性やヘルシーさがキーワード 日本食糧新聞電子版 Z世代が感じる牛丼チェーンとハンバーガーチェーンの価値の違い 日本食糧新聞電子版
肉まんの「おいしさの表現」は
寒くなってくると活発に売れるようになる肉まんやあんまんのまんじゅうライン。肉まんの温かさを表現する定番の言葉は「ほかほか」ではないだろうか。誰しもほかほか、またはホカホカ(カタカナにするだけでも印象は変わる)を見聞きするだけで、「温まりそうだ」と認識できる。また、ホカホカという表現だけで、フワッとした食感やふんわりしたぬくもりの感覚も同時に感じることができるだろう。 しかし大学講師も勤める筆者の周囲にいるZ世代は、あまり「ホカホカ」を使うことはない。肉まんやあんまんにも「アツアツ」と表現する。平成時代くらいまでの感覚だと、アツアツな肉まんは、手で持てないくらいの熱さや火傷しそうな湯気を想像するだろうが、最近では、ほどよい温かさにも多用している傾向が見える。また、アツアツの味噌汁などは、Z世代では「アッツ」であったり「ヤバイ熱さ」と表現したりする。味噌汁を「アツアツ」とは言わないようだ。
焼き芋にみるトレンドの変化とおいしさの表現の連動
1つの食品においても味の流行の変化によって、当然のようにおいしさの表現も変化する。近年人気のある焼き芋もそうだ。昭和の時代は「ホクホク」「ほっかほか」などがおいしい焼き芋の表現として定番だった。焼き芋売場には「ホクホク焼き芋」と書かれていた。当時はネットリしたタイプの焼き芋に当たると「残念」と思われていたのだ。 しかし近年では、「ネットリ」「とろ~り」がおいしい焼き芋を表現する代表的な言葉だ。そこには焼き芋をヘルシースイーツとしてとらえる新たな視点が背景にあると考えられる。糖度が高く、ネットリした食感が「スイーツ」として売れるようになり、並行して蜜がしたたるような様子は「映え」となり好まれるようになった。売れる品種も変化し、紅はるか、シルクスイートといったネットリタイプの芋の品種が増えている。以前は好まれていなかった食感が売れ筋に変わったのである。