肉まんは「ほかほか」より「アツアツ」 Z世代に響くオノマトペは
売れ筋商品の変化とおいしさの表現
コメに対するおいしさの表現も変化している。以前は、「粒1つ1つが立っている」などの台詞が炊飯器のCMとして流れていたように、“粒感”はおいしいコメの重要な要素だった。また、味もおかずの味を邪魔しないさっぱりとした食感が好まれた。 しかし現代は、全体に口にいれた際にもっちりした食感があり、甘く軟らかいタイプが人気になっている。それにより、売れ筋の品種の変化、炊飯器の開発も変わってきているようだ。コンビニエンスストアのおにぎりも軟らかく甘味があるようになり、艶を出している。
人気1位のオノマトペは「もちもち」
好みの変化がオノマトペに顕著に表れているのはパンだ。以前「パン・ド・ミー」という山型食パンに見えるフランスのパンが一世風靡した。焼き立てを求めて行列ができた。パン・ド・ミーは、食パンに比べて砂糖や油脂が少ないため、あっさりした風味で、耳が薄くパリッとしていて軽い口当たりが特徴だ。「焼いた時のサクサク食感」がおいしいと言われた。 だが近年は、さまざまなパンのキャチコピーにはひんぱんに「もっちり」が使われている。「もっちり食パン」「もちもちしたパン」などと書いてある。この「もっちり」「もちもち」を好む傾向は数年前から増加していて、ある民間企業の調査によると、「好ましい食感のオノマトペ」のランキングでは1位になっている。 ふんわりしたパンに関しても、跳ね返りのもっちり感は求められており、単にふんわりではないものが好まれる。モチモチはあらゆる食品に好まれているため、パン以外にも「モチモチ」食感が多くの食べものに汎用(はんよう)されている。ピザ、麺類、アイスクリーム、どら焼きの皮、ご飯、せんべいなど糖質のものにはよく使われる。 食感のトレンドが変わるとともに、売れる商品が以前と“真逆”になる。次回は、主にZ世代が用いるオノマトペから、彼らの言語に対する感性と求める食に関して考察したい。(食の総合コンサルタント小倉朋子)
日本食糧新聞社