日本に増える「ガチ中華」、中国人オーナーにエリートの飲食未経験者が多い納得の事情
夫の季さん(38歳)、妻の徐さん(35歳)、小学5年生の息子の3人家族は、2024年7月に日本に移住してきたばかり。来日の動機やきっかけは、非常に単純だった。「とにかく日本が好きだから」 「コロナ前に初めて日本を旅行した時、道で走っているダンプカーを見て驚きました。ピカピカでまるで鏡のようだったからです。中国では、工事現場で作業する車両はものすごく汚れています。ダンプカーまでこんなにきれいな国は『なんてすごい国なのだろう』と思ったのです。なにより、空気も治安も良くて、食べ物がおいしい」(季さん) 一方、妻の徐さんは教育面での期待を語る。「息子を中国のような強烈な受験競争の環境下では育てたくないと思いました。学校での勉強のほか、総合的な生きる力を身に付けて、のびのびと成長してほしいと思いました。受験よりも人間力を磨くような日本の教育のほうが自分の考え方に合っています」(徐さん) ワンタンの仕込みや調理は季さんが、SNSなど店の情報発信は妻の徐さんが行っている。徐さんはもともとテレビ局勤務で、動画制作が得意なためだ。店の情報や日本での生活の様子などを徐さんが頻繁にアップしているため、店の知名度は一気に上がった。 話していると、夫の季さんは控えめでおとなしく、妻の徐さんは活発な印象がある。夫婦がそれぞれ得意な分野を担当し、二人三脚で頑張っている姿がとても微笑ましい。二人は「我々は日本語ができなくても、一度も嫌な思いをさせられたことがない。逆に日本の皆さんにすごく親切に接してもらっている。中国人のお客が増えているが、日本人のお客にももっと来てほしい」と笑って話していた。 ● 大阪・十三の焼き小籠包専門店「陶然軒」 もう一つ紹介したいのは、大阪の下町・十三にある焼き小籠包専門店「陶然軒」だ。経営者の羅さん(40代)一家4人は、2022年に来日。上海はロックダウンの真っ最中だったので、まさに命がけの移住だった。店舗物件の探索や内装工事など、数々の困難を乗り越えて開業にこぎつけた。 先日、店を訪ね、久しぶりに羅さんと会って話した。これまで苦労ばかりだったので苦労話を聞かされるかと思ったら、まったく違った。「すごく楽しい!毎日充実している」と、羅さんの表情は明るい。