王者ブレイニー勝利で最終決戦へ。ベルvsバイロンはまさかの“壁走り”で懲罰決着に/NASCAR第35戦
ポストシーズンも終盤戦、最終『Championship 4』への進出を賭けマーティンスビル・スピードウェイで争われたNASCARカップシリーズ第35戦『エクスフィニティ500』は、ディフェンディングチャンピオンのライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が晴れて『Round of 8』最後のウイナーに。 【写真】場外乱闘もあったエクスフィニティ・シリーズは、トヨタGRスープラを駆るアリック・アルミローラが今季3勝目 一方、残る1枠を争ったクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)とウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)のふたりは、誰も“追い抜こうとしない”シボレー艦隊を引き連れたHMS陣営の戦いぶりに対し、タイブレークからの必要な1ポイントを奪うべく、僚友ダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)に“道を譲られた”ベルが、直後のターン3でまさかの動きを見せる。 姿勢を乱してウォールに張り付いた20号車カムリXSEは、そのままスロットルを開けた“壁走り”でホームストレートに戻り、これがNASCARの定める「安全違反とみなしされる行為」に該当しペナルティに。結果、4ポイント差でバイロンが『Championship 4』進出を決める懲罰決着となっている。 今季導入の新型カムリXSEでも、引き続き高速トラックを得意としてきたトヨタ陣営だが、実働部隊のジョー・ギブス・レーシング(JGR)にとってこの0.526マイルのショートトラックでは、今季限りでの現役引退を表明済みのマーティン・トゥルーエクスJr.(トヨタ・カムリXSE)がフリープラクティスから予選を制してポールウイナーに輝く一方、タイトル候補の一角を占めるデニー・ハムリン(JGS/トヨタ・カムリXSE)は、スロットルの故障からプラクティスでクラッシュを喫し「必勝体制」が求められるなど、走り出しから日曜決着の波乱を予感させるスタートとなる。 さらに迎えた決勝では、そのJGR陣営の前に宿敵ヘンドリック・モータースポーツ(HMS)の壁が立ちはだかり、ステージ1勝利はフロントロウ発進を切ったチェイス・エリオット(HMS/シボレー・カマロ)の手に渡り(129周をリード)、さらに5列目発進だったカイル・ラーソン(HMS/シボレー・カマロ)も上位進出以降71周のラップリード、そしてバイロンも51周に渡り隊列を率いるなど、各ドライバーともプレーオフ権利者としての実力を見せつける。 一方のフォード艦隊も、ステージ2を制したブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)に加え、グッドイヤーのオプションタイヤを右側に、ソフトコンパウンドを左側に使用したブレイニーが奮闘。すでに『Championship 4』進出を決めている僚友ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)に続けとばかりに、500周中の486周目にHMSの9号車エリオットを仕留め、今季3度目、キャリア通算13回目の勝利を飾ってみせた。 「疲れ果てた。もう何も残っていないよ」と、414周目のリスタート後から怒涛のチャージを見せ、前方のラーソンとエリオットを仕留めたブレイニー。 「ああ、本当に疲れたが、いい戦いだった。このクルマは他よりも長く持ち堪えたし、かなり挽回できた。最後の70周くらいはできるだけリヤタイヤを温存しようとたが、後半は苦労し始めた。何人かのドライバーにバンパーをぶつけなければならなかったのは嫌だったが、やらなければならなかった」 「夜どおし僕の12号車を速くしてくれたみんなに感謝する。ありがたいことだ。レース後、こんなに疲れたのは久しぶりだと思う」と決勝32周をリードし、0.526マイルでは2勝目を飾ったチャンピオン。 背後に続いたエリオット、ラーソンは残念ながらここで敗退が確定し、残すバイロンはオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とハムリンに次ぐ6位でフィニッシュ。終盤からファイナルラップまで、同じくシボレー陣営のオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)とロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が24号車カマロZL1の背後を護衛し、ステージ2覇者であるケセロウスキーのフォードを抑え込む働きも見せ、残すは18番手で格闘するベルの動向次第となる。 しかし序盤のターン2でのスピンや、ホイールナット再締結を要した複数ピットなど苦しいレース展開により、前述のモーションでチェッカーを駆け抜けたベルに対し、NASCARがビデオ審査して最終結果が出るまでに27分の協議期間を要し、かつて2022年にポストシーズンで勝ち進むべくチャスティンが披露した“ビデオゲーム・ムーブ”に端を発し、正式に競技規則で定められた違反行為に該当することが確認された。 「彼は壁を走った。壁を走ってはいけないという明確なルールがある」と、のちに制定された禁止事項について言及したバイロン。 「当時は僕ら全員が会議に出席し、それを禁止するルールが必要かどうかについて話し合った。今回、彼(ベル)の前輪はターン4を抜けるときに地面から離れてフェンスにぶつかっていた」 ■「あれは敗者の動きだった」とクリストファー・ベル 仮に18位フィニッシュを維持した場合、タイブレーカーとしてバイロンを破って『Championship 4』進出を決めていたハズのベルは、今回のカットオフレースでの内容はその権利を獲得するに不充分だったと認めた。 「残念ながら、僕は不利な立場だった。多くのミスを犯し、ずさんなレースを走った。このようなボール・アンド・ストライクの判定にまで至るのは残念だ」と4ポジションダウンの22位に終わり、僚友ハムリンとともに敗退が決まったベル。 「両サイドから物事を眺めれば、シボレー陣営は24号車(バイロン)がポジションを失わないように、背後の車両が多くのブロックを続けていた。僕は(最終ラップで)スライドして壁に飛び込んでしまったが、あれは敗者の動きだったと思う」 引き続きNASCARは、次週バイロンとロガーノ、ブレイニー、そしてレギュラーシーズン王者タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が争うフェニックスでの最終戦『Championship 4』を前に、ベルにポジションを譲った可能性のあるウォレスや、ディロンとチャステインが並んでバイロンの後ろを走っていた事案など、これらの一連の出来事をすべて調査する予定としている。 そして併催となったNASCARクラフツマン・トラックシリーズの第22戦『ジップ・バイ・ナウ, ペイ・レイター200』は、残り5周のリスタートでテイラー・グレイ(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRD-Pro)や、ベン・ローズ(ソースポーツ・レーシング/フォードF-150)を仕留めたクリスチャン・エッケス(マカナリー・ヒルゲマン・レーシング/シボレー・シルバラードRST)が、最終『Championship 4』への進出権を獲得。 同じく併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第32戦『ナショナル・デット・リリーフ250』では、ショートトラックの250周中150周をリードしたアリック・アルミローラ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が今季3勝目を飾り、こちらもレギュラー勢を差し置いての最終ステージ進出権を手にしている。 [オートスポーツweb 2024年11月06日]