米ミシガン州の選挙集会に参加するハリス副大統領（左）とチェイニー元下院議員＝21日（AP）

【ワシントン＝大内清】11月の米大統領選で民主党候補のハリス副大統領（60）は21日、選挙戦を大きく左右する五大湖周辺の接戦3州で有権者との対話集会を開いた。遊説には共和党候補のトランプ前大統領（78）に反対する同党のチェイニー前下院議員が同行し、ハリス氏への支持をアピール。両者の異例の「タッグ」には、民主党支持層や無党派層のみならず、トランプ氏に懐疑的な共和党支持層をも引きつける狙いがある。 【グラフでみる】接戦州77人の選挙人を巡ってハリス、トランプ両陣営が激しく争っている ■政治的分断の解消前面に ハリス氏らが訪れた東部ペンシルベニアと中西部ミシガン、ウィスコンシンの3州は、民主党のシンボルカラーから「ブルーウオール（青い壁）」と呼ばれる。1992年から2020年までの大統領選で、トランプ氏が初当選した16年を除き民主党が制してきた。ハリス氏がこの3州で勝利すれば当選に必要な選挙人数に達する可能性が高いが、現状はいずれも支持率が拮抗（きっこう）している。 ハリス氏が今回、党派を超えてチェイニー氏とともに遊説したのは、多くの国民が不満を抱く政治的分断の解消に取り組む姿勢を前面に押し出すためだ。ペンシルベニア州の集会でハリス氏は、敵・味方を峻別（しゅんべつ）するトランプ氏の手法が分断を深めたと批判し「新世代のリーダーシップに向かうべきだ」と力説した。 ■当選ならチェイニー氏の要職起用も また両氏は、外交・安全保障分野では、同盟国との連携やウクライナ支援を重視することなどの共通点を強くアピール。トランプ氏の孤立主義的な姿勢に懸念を持つ層への訴求を狙った。チェイニー氏は、中露などを念頭に「トランプ氏は権威主義勢力の指導者をアイドル視している」などと指摘し、20年の前回選の敗北後に選挙結果を覆そうとするなど民主的手続きを軽視するトランプ氏を「当選させるわけにはいかない」と訴えた。 チェイニー氏を巡っては、ハリス氏が当選した場合、国防長官などの要職で起用する可能性も取り沙汰される。 チェイニー氏は、前回選後の21年1月に起きたトランプ支持者による連邦議会襲撃事件を受けてトランプ氏の弾劾訴追に賛成した共和党議員10人のうちの1人。当時、同党下院ナンバー3の要職にあったが、トランプ氏の怒りを買って解任され、22年中間選挙の予備選で同氏派候補に敗れた。