授業を一緒に受けることは許されない…ヨルダンで暮らすシリア難民の子供達
経営難に苦しむNGO団体
長引く内戦で、NGO団体はどこも経営難に苦しんでいた。現在、ヨルダン政府はシリア難民に一切の支援をしていない。そのため、難民やNGOなどの支援団体は、ユニセフもしくはその他の募金以外に経済的支援を受けられていない。内戦勃発から8年が経ち、当初多かった寄付金も徐々に少なくなって、多くの団体が規模縮小を余儀なくされていた。 2012年に5人のシリア人女性によって作られたNGO団体Souriyat Across Bordersは、教育事業や刺繍制作事業、シリア国内への物資支援などを行っている。活動を開始した当初は内戦によって怪我をした難民たちへのリハビリテーション事業や療養施設を提供していた。多い時は10人以上の患者を抱えていたが経営難により、2017年1月リハビリテーション事業を止め、コストの比較的かからない教育事業を始めた。
大学からの帰宅途中、シリア政府軍に撃たれた
私は、Souriyat Across Bordersでかつてリハビリテーションを受けたという1人にインタビューした。彼は、ヨルダンとの国境に接するシリア南の町ダルアーで、大学からの帰宅途中、シリア政府軍のスナイパーに右胸、右太もも、足の甲を撃たれた。アサド政権下のシリアでは治療を受ける事が出来なかったため、2013年ヨルダンに適切な治療を求めて、難民として移住してきた。 現在ヨルダンで暮らしながらオンラインで大学の授業を取っている彼は「シリア難民がヨルダンで仕事を見つけることは非常に難しい」と話す。多くは、一部家族をシリアに残してヨルダンに移住してきている。いまだにシリア国内に残る家族を支えるため、ヨルダンで出稼ぎをしている難民もいるのだ。話をしてくれた彼のように大学で教育を受けた学生でも、ヨルダンでは仕事も見つけられないという。 Souriyat Across Bordersで働くスタッフたちには、アレッポやモスルといったシリア内戦の激戦地出身者もいた。彼らは皆、内戦で兄弟や親戚を亡くしていた。「まだ弟が政府軍に捕まっている」という話もあった。身体や心のどこかに傷を負いながら、皆それでも異国のヨルダンで何とか生活をしようとしている。胸が詰まるような思いで一杯になった。 今年シリアの内戦は8年目に入った。4月にもアメリカ軍がイギリス、フランスの両軍とシリアに向けてミサイルを発射した。依然として不安定な情勢は続き、シリア国民に安全な日々が訪れる目途は立っていない。これまでにおよそ550万人の難民を出したこの内戦を受け、シリア周辺国は国境を封鎖している。 内戦の国内に閉じ込められた人々と、異国の生活に苦労する難民の人々。彼らシリアの家族が再会し、笑って暮らせる日々はいつ訪れるのだろうか。 ---------- ■岩村優希 学生兼フォトジャーナリスト。1997年長野県生まれ。アメリカ留学中に写真の授業で見たベトナム戦争の報道写真を見て、フォトジャーナリストを志す。現在、学校に通いながらロサンゼルスを拠点に社会問題を取材中。