“タワマン配達”の困惑ルール「まるでダンジョン」、ドライバーを苦しめる「台車」「置き配」禁止する驚きの理由
最近、宅配大手でも広がる「置き配」も、マンションによってはセキュリティ面の事情や美観を損ねるなどの理由で禁止されている。置き配ができれば配達効率は大幅にアップするが、ルールに従うしかない。 また、一部マンションは設計時に物流大手と配達の動線や宅配ボックスの数などについて相談する例もあるが、多くのマンションはそうした効率まで考慮した設計になっていないのが実情だ。 ■採算悪化で特別料金を模索 現場から寄せられる、マンションへのさまざまな要望
・住民が宅配ボックスに私物を入れる、荷さばきスペースに駐車することの改善 ・使用できる駐車場の充実、エレベーターの制限を緩和する ・宅配ボックスの数を増やす。住民の利用を促進してもらう ・セキュリティや置き配の緩和。コンシェルジュに荷物を渡す仕組みなど ・物流センターを常設して運営費をもらい、館内配送を業者に委託する (一部の大規模マンションでは、1社に館内の配達を集約する例がある) 現場からははさまざまな要望が上がっている。どれも配達をより迅速に、効率的にするための提案だ。しかし宅配業者としては、顧客側に要望を突きつけることは、立場上かなり難しい。
ある宅配業者の首脳はタワマン配達に関して「なんとか特別料金をとれないか」と模索しているという。人手も手間もかけているのに、通常の料金では採算が悪化してしまうからだ。 大手業者は各社とも工夫を凝らしている。Amazonは配達する建物の駐車場の場所やメールルームへの行き方をアプリ上で紹介し、注意事項も共有するなど配達員をサポートしている。 ヤマト運輸は役割分担し、チームで配達する例がある。インターホンを鳴らすスタッフと荷物を配達するスタッフを分ける。荷物が多いときは、不在票を書くスタッフもいるなど、チームで配達を行うという。
荷さばき駐車場も利用時間が30分に制限されるなど、1社がいつまでも使えるわけではない。そこでドライバーが荷物を全部下ろし、配達部隊が分担して運ぶ。多いときには一度に届く荷物が300個近くになることもあるという。 佐川急便もマンションによっては専用台車を使うなど、各マンションのルールに対応している。 ■独自ルールはドライバーに負担 今年4月、政府は「再配達削減PR月間」と称し、主に消費者の意識を変える点を呼びかけた。時間帯指定を活用すること。各事業者が提供するツールを利用すること。コンビニや駅の宅配ロッカー、置き配など、さまざまな受け取り方法を使うことなどだ。
しかし紹介してきたように、マンションのさまざまな独自ルールがドライバーや配達員の負担になっているのも事実だ。 宅配の課題は消費者に密接にかかわる問題だ。マンション住民にとっての快適さも大事だが、そればかりを優先するなら、特別な料金が設定されたり、配達を断られる可能性もゼロではないだろう。宅配業者と協力し、共に妥協点を探っていくことこそ、適切なサービスを受けるために欠かせない点と言えそうだ。
田邉 佳介 :東洋経済 記者