アート×スチームサウナ!? 栗林隆の《元気炉》が栃木県・大谷石採石場の地下空間に出現。
なおハーブは、運営スタッフが近くの畑で育てたものを使用。「地産地消。その土地のものをその土地の人が享受していくのは、理にかなったこと。そういう循環を意識し、自分たちの暮らしの足元を見つめ直すことも、今の時代、大切だと思うんです」と栗林。 現地では、「生きていない!」という文字が書かれた特製タオルもグッズとして販売する。“現代人は未来のことばかりを考えすぎている。先に未来を見据えないと不安なのかもしれない。でもそうではなく、今、この瞬間、ここにいることを自然に実感し、生きるべきでは?”というメッセージを込めたものだという。 「少なくとも、ここ《元気炉》では、そのような“今、ただここにあるだけ”ということに集中してもらえたら」
また、今回の《元気炉》があるエリアには、美術家・原口典之の作品が置かれている。入場料にはこれらの鑑賞料も含まれている。 「原口典之さんは、日本人として初めてドクメンタに参加した大先輩。ご本人とは飲み屋でベロベロの状態で会ったことがあるくらいですが、じつは息子の原口英興さんは、僕が一緒にプロジェクトをおこなってきたシネマキャラバンのメンバーのひとりなんです。2022年のドクメンタも、シネマキャラバンと一緒に参加しました。原口家とは不思議な縁があるんです」 近年のアートの世界に対し、栗林なりに思うところがあると話す。 「例えば、特に90年代以降、新しい美術館をつくるとき、有名な建築家が建物を設計し、有名な外国人の作品を置くようなスタイルがずっと続いてきました。その一方で、日本人の若い作家が作品を展示できる機会はあまりない。アートの持つ力とは何か、アートに何ができるかを改めて考えながら、作家が発表する場所をどう作れるか。そろそろ僕たち自身が率先して考えていかなければいけないと思うんです」
〈大谷元気炉六号基〉
栃木県宇都宮市大谷町909-11。火曜・木曜休。9時30分~、12時30分~、15時~の各2時間制。入場料1,500円、《元気炉》の体験料は別途3,500円。体験用の水着やタオルは現地でレンタル可。入場料には元気炉以外のアート鑑賞も含まれる。
photo_Kenya Abe text_Masanobu Matsumoto