愛した男は何者なのか?“双子”の謎が導く心理サスペンス『2重螺旋の恋人』
登場人物、映像のすべてが気になる 現実と妄想が交錯
さて、同作に彩りを添えるベテラン女優たちにも注目したい。猫が大好きな隣の干渉したがりのおせっかいなオバチャンにミリアム・ボワイエ。クロエの実母と双子の過去に関わる重要な役どころに名女優ジャクリーン・ビセット。クロエの症状に対して、クールに分析し情報を与える臨床医役のドミニク・レイモン。彼女らは同作の中では、クロエの潜在的な母親としての役割を与えられているという。また、それぞれの情事をまっすぐな瞳で見つめる2匹の猫の存在も気になる。 クロエが勤める現代アートの美術館のシーンもぼーっと観ているだけではもったいない。物語が展開していくとともに展示物のテイストが変わっていく様子にも注目してほしい。 そして、クロエが見ているのは、体験しているのは、現実なのか? 妄想なのか? 双子の謎を追ううちに、クロエの真実(たぶん?)を目の当たりにし、衝撃の結末を迎えることになる。気がつけばあんな所にも、こんな所にも謎は放置されたままとなる。結局のところ結論は、「なるほど」と頷ける部分もあれば、観た人それぞれの解釈と想像力に委ねるというあいまいな部分も残している。オゾン監督は正解を握っているのかもしれないが、それを押し付けるような真似はしない。これはまんまとオゾン監督の仕掛けた罠にかかったということか。螺旋のようにぐるぐると、余韻がいつまでも続いている。 (文:小杉聡子) 『2重螺旋(らせん)の恋人』<R18>、8月4日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開、配給:キノフィルムズ、(c)2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU