日本は国会見送り 職場全面禁止15年、受動喫煙対策強化進む米国NYの現状
ビジネスも反対 人びとは意外にはやく適応
2003年当時、レストランやバー、ナイトクラブといったビジネスからも大きな反発があったのは、今の日本の状況と全く同じです。違反すれば罰金400ドルに営業停止処分の可能性があるにもかかわらず、これに従わないビジネスが多く出てくるだろうとか、倒産が相次ぐだろうと断言する声も一部にありました。 実際、直後にはレストランの客入りがわずかに、バーでは18%減少。しかし、結局すぐに元の状態に戻りました。ある主要レストラン・タバーン協会も、業界が恐れていたほどのインパクトはなかったと認めています。市の保健局によると、施行から10年たった2013年の時点で、ニューヨーク市には6000軒のレストランおよびバーが新たに誕生しました。 ブルームバーグ前市長の言うとおり、人びとはレストランやバーの軒先でたばこを吸うことに、すぐ慣れてしまったようです。ひとたび禁止となってしまえば、嫌がられながら、もしくは嫌がられているかもしれないと思いながら吸うよりは、外でせいせいと吸ったほうがいいという愛煙家も多いのではないでしょうか。 今ではレストランやバー、あるいはオフィスビルの外で、人びとが談笑しながらたばこの煙をくゆらす風景がすっかり街の一部になっています。路上での喫煙は禁じられていませんが、そういえば歩きたばこをしている人も減ってきた印象があります。
「吸いにくい」「買いにくい」「売りにくい」
実際に喫煙者数も減りました。全面禁止とともにたばこ税も大幅に上げたため、たばこの売り上げ自体が激減。現在、たばこ1箱の最低値段は10ドル50セントと定められています。喫煙年齢は18歳から21歳に引き上げられ、たばこ製品は店のカウンターの後ろか、鍵のかかったケースに入れることが義務づけられました。 要するに、「吸いにくい」に「買いにくい」と「売りにくい」がセットになっているのです。これに禁止の翌年から、無料で禁煙パッチを配る「NYC Quits」プログラムが追加されるなどしたことで、受動喫煙だけでなく、たばこの消費そのものが確実に減っていきました。 成人の喫煙率は、2002年の21.5%から2011年には15%まで、18歳未満では約半分の8.5%まで下がるなど、特に若者の間で喫煙率が下がったそうです。2007年に公衆衛生ジャーナルに発表された論文によると、施行から1年後にニューヨーク州で心臓発作により入院した人の数は3813人減少、5600万米ドルの医療費が節約されるという経済効果もありました。