軽度認知機能障害の前段階とは/医療ジャーナリスト・安達純子
「新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<6> 認知症の原因として多いアルツハイマー病やレビー小体型認知症は、長い時間をかけて脳が変性すると考えられている。 「アルツハイマー病でもレビー小体型認知症でも、早期の段階で匂いがわかりにくくなる嗅覚障害を起こしやすいといえます。花粉症や副鼻腔(びくう)炎の人は判別しにくいのですが、鼻に異常がないのに脳の機能低下で匂いがわかりづらくなるのです」と筑波大学付属病院認知症疾患医療センター部長の新井哲明教授は話す。 アルツハイマー病やレビー小体型認知症の前段階は軽度認知障害(MCI)と称す。さらに、MCIの前段階を主観的認知機能低下(SCD)という。早ければSCDの段階ですでに脳には変化が起き、嗅覚異常、レビー小体型認知症の場合は睡眠中に大きな寝言などが生じるという。 「昨年承認のレカネマブと、今年承認のドナネマブによって、アルツハイマー病のMCIに対する治療薬が初めて登場しました。MCIに対する治療がようやくできるようになったのです。この進展により、将来的には、SCDの段階での治療が可能になるかもしれません」(新井教授)。 アルツハイマー病では、脳にアミロイドβとタウという2つのタンパク質がたまり、神経細胞が死滅していく。SCDの段階での改善予防法ができれば、進行を止めることができるかもしれない。 「そのためにも、現在のMCIに対する治療をより良いものにすることが大切です」と新井教授は話す。