「実は増税が正解...?」 慶応大教授が訴える「増税」がもたらす意外すぎる効果
「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」 そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。 『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第18回 『「外国人でも学費は無料」「子供のために貯金はしない」日本が学ぶべき「ある国」の圧倒的な教育制度』より続く
税負担で可能に
もちろん無償化は高い税負担によって支えられている。税と社会保険料が国民所得に占める割合を示す国民負担率(2019年)は、フィンランドの61・5パーセントに対し日本は44・4パーセントで、先進国では低い部類に入る。 日本に限らず増税への拒否感は強い。だが、人が社会の中で生活するのに必要な医療、教育、介護などを「ベーシックサービス」として、消費税を上げることで無償化することを提唱するのが、慶応大教授(財政学)の井手英策だ。 消費税1パーセント分の税収は約2兆4000億円。井手は、消費税率を1パーセント上げるだけで大学の授業料はすべて無償化できると訴える。仮に6パーセント引き上げれば、医療や介護だけでなく、義務教育に伴う給食費や修学旅行費といった自己負担まで無料にできると試算する。 その上、低所得の約1200万世帯には月々2万円の住宅手当を支給することも可能だという。年収200万円以下の世帯の場合、消費税率6パーセントの引き上げによる追加支出は年間約10万円で、年24万円の住宅手当だけで負担増加分を上回るとそろばんをはじく。