空前の株価連騰劇なのに「バブル」論が浮上しないのはなぜ?
東京株式市場が10月に入ってから記録的な株価連騰劇に沸いている。日経平均は10月2日から24日まで営業日ベースで16日連続高を記録。これまでの最長記録だった第2次・池田勇人内閣当時の1960年12月21日から61年1月11日までの14連騰を抜いて史上最長を達成した。16連騰を実現した翌25日は97円安と、ようやく17日ぶりに一服したものの、26日、27日、30日は再び連続高。14連騰が始まる直前から10月30日までの間に日経平均は2000近くの上げ幅昇となった。これは行き過ぎの相場、つまりバブル相場なのだろうか? 市場動向を洗うと、今回は違う、との見方が有力だ。(解説は証券ジャーナリスト・駿河一平)
「バブル相場再燃」という切り口からのニュースはほとんどない
ベテランの証券マンの間ですら、「凄まじい相場エネルギーに圧倒される」(準大手証券)との声が上がるほどの今回の株価連騰劇。しかし、これほど熱気に包まれているにもかかわらず、マーケットに「バブル」との見方が浮上してこない。なぜだろうか。 注意してチェックすると分かるが、大手メディアの報道も、短期的な過熱感を指摘こそすれ、「バブル相場再燃」という切り口からのニュースはほとんどない。 2015年6月に日経平均が2万円台を回復したとき、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率の引き上げなどを理由に、安倍政権がリードした「官製バブル」の論評がマスコミから野党に至るまで幅広く渦巻いていたのとは、まるで違う。
理由は「個人売り」対「外国人買い」
理由は単純。官製バブル論を誘発するような、いわゆるPKO(Price Keeping Operation=株価引き上げ策)めいた動きがを潜めているからだ。 ちなみに、夏場まで日本銀行による継続的な上場投資信託(ETF)買いが株価を下支えし、株価形成を歪(ゆが)めている、との見方が多かったものの、9月29日を最後にピタリ途絶え、10月初旬以降、つまり日経平均が勢いよく上げ続けている局面でも買いはゼロ。GPIFも通常通りの運用を続けている。官製バブルの根拠そのものが今回の相場では失われているのだ。 しかも、過去のバブル相場では最後のババをつかむように、ほぼ例外なく大挙して買い出動してきた個人投資家が動いていない。それどころか、10月第1週から第3週までのトータルでは、現物市場で1兆1900億円と大幅に売り越し、先物市場でも210億円の売り越し(東証発表ベース)。 その一方で、どんどん買い進んでいるのが海外投資家だ。現物市場で見ると、10月第1週で6575億円、同2週が4594億円、そして同3週は4452億円の買い越し。先物市場では10月第1週から3週までの合計で1兆1487億円の買い越しを記録した。要するに、外国人と国内の個人投資家は正反対の投資行動を起こしているわけだ。 10月22日投開票の総選挙で自民党と公明党を合わせた議席数が全体の3分の2を越え、安倍政権の安定運営が担保されたことから、その後も買いは継続しているもよう。国内の投資家が舞い上がって形成される、かつてのバブル相場の色合いは、こと需給面からは確認できない。