空前の株価連騰劇なのに「バブル」論が浮上しないのはなぜ?
「非バブル状態」の背景にある収益増
それと、もう一つ。これは相場の「非バブル状態」の有力な傍証になるが、上場企業の業績向上が加速している、という事実だ。 日本経済新聞社が日々、算出し、公表している日経平均に採用されている225社の平均予想PER(株価収益率)から予想EPS(一株利益)を算出すると、直近10月30日時点では1435円。1年前の昨年10月31日は1181円で、この1年間で21%アップしている。6カ月前の4月27日の1191円と比較しても、20%増の水準だ。 こうした予想EPSの向上によって、株価がかなり上昇しても、なかなか割高感が表面化してこない、というのが現在の状況である。 株価を予想EPSで割って得られるのが、予想PER。株価に対して、この予想PERが何倍まで買われるかによって、株価の割安や割高をチェックする一つの目安になるが、10月27日現在では15.3倍。日経平均が現状より2700円以上、下のレベルの1万9274円という9月安値時の14.3倍と比べても、株価が上がった割には予想PERが上昇していない。 ちなみに、2012年11月半ばからスタートしたアベノミクス相場における予想PERの最高は13年4月当時の23.4倍だっただけに、現在の水準は相場的に過熱感の乏しい「適温状態」と言えるだろう。
主力企業の増額修正相次ぐ
今後、上場企業の今3月期第2・四半期累計(4~9月)決算は11月半ばに向け発表ラッシュの局面を迎えるが、これまでに公表した大手企業の決算は総じて順調そのものだ。 10月26日に発表した日立(6501)は今回の決算発表時点で通期の連結営業利益見通しを従来の6300億円から6600億円(前期比12.4%増)と300億円上方修正したが、この予想の前提となる為替レートは1ドル=100円、1ユーロ=120円。為替感応度を踏まえると、再増額修正される可能性を残している。 コマツ(6301)も通期の連結営業利益予想を10月27日、1560億円から2160億円前期比24.1%増)に引き上げた。新日鉄住金(5401)も大幅な伸びを予測している。日本を代表する、こうした企業の業績好調は日本経済がデフレ脱却に向けて、いよいよ本格的に動き出したと見ていい。96年6月以来、つまり日本経済が統計上、年デフレスパイラルに突入する97年秋よりも1年以上前の株価市レベルに復帰したことが、そのことを物語っているといえるだろう。 もちろん、短期的には株価は走りすぎのスピード調整は当然、考えられる。しかし、好需給と好業績によるバックアップで、しばらく押し目買い優勢のブル(強気)相場が続きそうだ。気を付けなければならないのは、株価の継続的上昇によって、次第に浮かれムードが広がり、個人投資家の間から警戒論が後退するようになった時だが、まだ、その局面には達していない。 (証券ジャーナリスト・駿河一平)