市民ランナーの心とらえる「サブ4の魔力」の正体、「ギリギリ4時間以内」のゴールがもっとも多い
「年収1000万」「TOEIC 800点」など、私たちはキリのいい数字にこだわり、それを基準に物事の評価や自身の行動を変えたりします。これは「概数効果」と呼ばれ、スポーツの記録の世界でもよく見られる認知バイアスのひとつだといいます。こうした「概数効果」はスポーツ選手の成績にどういった影響を与えるのでしょうか。マラソン競技を例に、スポーツのデータ分析にくわしい今泉拓氏が解説します。 ※本稿は今泉氏の著書『行動経済学が勝敗を支配する 世界的アスリートも“つい”やってしまう不合理な選択』から、一部を抜粋・編集してお届けします。 【グラフで見る】「ギリギリ4時間以内」がもっとも多い、フルマラソンのゴールタイム分布
■「3時間59分」と「4時間0分」の決定的な差 皆さんに1つクイズです。 42.195km を走るフルマラソンで、一番多く記録されているタイムは次の①~④のどれでしょう? ①3時間35分 ②3時間43分 ③3時間51分 ④3時間58分 答えは④。フルマラソンでは、◯時間以内で走ることをサブ○(4時間以内ならサブ4)と呼び、それを目標に走ります。 サブ4を狙う人にとって、3時間59分と4時間0分は、かなり大きな差に感じることでしょう。
私たちの日常生活では、「年収1000万」「TOEIC 800点」といったキリのいい数字を基準にして、その数字を目標とする場面が多くあります。 また、キリのいい数字を境にし、自身や周囲の印象が大きく変わることもあります。 TOEIC の点数を例に考えてみましょう。Aさん、Bさん、CさんのTOEICの点数がそれぞれ次のようなものだったとします。 Aさん:796点 Bさん:801点 Cさん:806点 AさんとBさんの点差も、BさんとCさんの点差も、同じ「5点」です。しかし、800点を超えているBさんとCさんの実力は近いと感じる一方、800点を割っているAさんと超えているBさんの実力差は大きいように感じると思います。