市民ランナーの心とらえる「サブ4の魔力」の正体、「ギリギリ4時間以内」のゴールがもっとも多い
さらにヒストグラムに注目すると、3時間・3時間半・4時間半・5時間といった時間でも、同様の崖ができていることを確認できます。 統計分析をした結果、この崖は15分ごとにできていることが判明しました。つまり、マラソンランナーは均等なタイムでゴールしているわけではなく、15分ごとのキリのいいタイムでゴールしやすいことが判明しました。 ■「ペースの維持」か「ラストスパート」か では、サブ4を達成するために、ランナーはどのような作戦(意思決定)を行なっているのでしょうか。アレンたちは追加分析し、ランナーの2つの作戦を示しました。
1つ目の作戦は、ペースを逆算することです。サブ4を達成するためには1km を5分40秒のペースで走ることが求められますが、スタートからこのペースをキープするランナーが多いそうです。 2つ目の作戦は、ラストスパートを頑張るという、驚くべきシンプルなものでした。40km 地点でサブ4ペースを下回っている選手は、残りの2.195km のペースが急激に早くなることが示されました。 つまり、最後に歯を食いしばってサブ4を達成するランナーが多いということです。キリのいい目標があることで、終盤のパフォーマンスが高まるというのは、興味深い結果です。
以上のとおり、アレンたちはマラソンランナーに概数効果がみられること、キリのいい記録を達成するために意思決定が変化することを示しました。 さらに、この概数効果は、大会の時期・規模・ランナーの年齢・カテゴリ・ペースメーカーの有無にかかわらず、みられることも主張しています。 アレンたちは、一流ランナーでもこの概数効果がみられると示しています。つまり、トッププロのランナーでも、キリのいい目標があることでそれをクリアするためにペースを組み立てたり、スパートを調整したりする可能性が考えられます。
逆にいえば、キリのいい目標がない場合は、記録を狙うインセンティブ(やる気やモチベーション)が落ちて、順位を競うことに注力しがちになるとも考えることができるでしょう。 ■男子マラソンの記録停滞と「2時間5分」の大台 ここで思い出すのは、男子マラソンの日本記録です。 男子マラソンの日本記録は、2002年に高岡寿成が2時間6分16秒を樹立してから、2018年に設楽悠太が5秒更新するまで16年間更新されませんでした。