【発売まであと1週間】登場秒読みのBYDシールってどんなクルマ? 挑戦的な価格、「ファミリー」の存在を解説
日本仕様のバッテリー容量は82.5kWhのみ
肝心のバッテリーはもちろんBYD自社開発の「ブレードバッテリー」だ。 ブレードバッテリーは「刀」形状のバッテリーセルを並列させたバッテリーで、種類としては安価なリン酸鉄(LFP)リチウムイオン電池となる。 BYDは元々はバッテリーメーカーとして創業した。その強みを生かし、同社はブレードバッテリーが安全性とエネルギー密度に優れるとしてアピールする。 シールの中国仕様のバッテリー容量は61.4kWhと82.5kWhの2種類が用意される。前者はCLTC(中国独自基準による計測)航続距離550kmの下位グレード向け。 日本仕様としては上位グレードしか投入されないため、後輪駆動と全輪駆動のいずれもバッテリー容量は82.5kWhとなる。 航続距離はWLTCモードでそれぞれ640kmと575kmと公表しており、カタログ上の数値としてはCLTCモードでの計測値の9掛けほどとなる。 これまでシールは純電動モデルのみの展開であったが、2023年7月にはPHEVモデルの「シールDM-i」が投入された。 こちらは全長×全幅×全高=4980×1890×1495mm、ホイールベース2900mmの別ボディを採用する新モデル。 パワートレインはBYD472QA型1.5L直列4気筒エンジン、上位グレードではそれのターボエンジン「BYD476ZQC」を採用。 バッテリーは最上位グレードで容量30.7kWhのブレードバッテリーを搭載しており、純電動航続距離はWLTCモードで200kmとする。 シールDM-iは2024年に「シール07 DM-i」へと改称、加えてより小型な「シール06 DM-i」も発表された。 今後、BYDは「シール」をセダン車種の総称として位置付け、さまざまなサイズのモデルを投入していく予定だ。
満を持しての登場 価格設定はいかに?
純電動版のシールが採用するプラットフォームは「e-Platform 3.0」と呼ばれるもので、先述のブレードバッテリーを基幹とする。 それに加え、高圧配電モジュール(PDU)、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、オンボードチャージャ(OBC)、車両コントロールユニット(VCU)、モーターコントロールユニット(MCU)、DC-DCコンバータ、駆動モータ、トランスミッションをひとつにまとめた「8 in 1 パワーシステムアッセンブリー」、そして「高効率ヒートポンプシステム」でこのプラットフォームは構成されている。 e-Platform 3.0はすでに日本で販売中のSUV「アット3」やコンパクトハッチ「ドルフィン」でも採用されている。 だが、シールでは独自に「セル・トゥ・ボディ(CTB)」という構造を採用する。これはバッテリーパックのトップカバーをボディのフロアと一体化させることで、バッテリーパック自体がボディの補強を担う一部となる形だ。 これにより得られるボディのねじり剛性は40500Nm/degにもなり、F80型のBMW M3やロールス・ロイス ゴーストにも匹敵する。 また、普通の電気自動車ではフロア高さが嵩みがちだが、CTBを採用することで低く抑えられている。 シールは日本向け車種の第三弾として2024年6月25日に発売される。BYDは2023年1月に日本で乗用車を販売開始して以来、2024年5月までの累計受注台数は2300台を超えた。 これまで日本で乗用車を販売したことのない中国ブランドであることを加味するとかなり好調だが、BEV自体が若干の下火傾向にあることも考えると、BYDとしてもなんとか現状維持から増加傾向へと転じさせたいだろう。 このような事情も考えると、日本仕様のシールはかなり挑戦的なプライスタグを下げて、6月25日の発売日にわれわれの前に登場することになるのではないかと予想する。
加藤博人(執筆) AUTOCAR JAPAN(編集)