師走の飲み会需要、コロナ前水準回復も少人数化 「価値観の変化」で大規模忘年会は減少
新型コロナウイルス禍後2回目の忘年会シーズンに向け、飲食店予約サービスを提供するトレタ(東京)が12月の予約状況を調べたところ、現時点で2019年の同時期と比べ、利用客の総数は同水準まで回復した一方で、コロナ禍後も宴席1件当たりの人数が少人数化していることが分かった。多くの企業がコロナ禍での忘年会中止を機に開催を取りやめる一方、気の合う少人数で集まる傾向が強まったことなど「価値観の変化」が背景にある。 【全国の働く20~50代に聞いた】会社の飲み会、帰りたくなる時間は? ■今年はこぢんまりと… 「コロナ禍はひと段落ついたけど、あまり皆さんから開催ニーズがない中で、会費を集めてまで開くのはどうかと思うため、今年は忘年会は開きません」 東京都千代田区の情報通信企業の男性社員(46)は、会議の中で上司からそう告げられたことを明かした。かわりにということでもないが、同期らとの忘年会を予定しているといい、他の同僚からは同じ担当同士でこぢんまりと飲む予定との話も耳にした。 ■「参加しなくていい」広まる トレタは予約サービスを提供する全国の飲食店約3千店に対し、11月11日時点の12月の夜間帯(午後5~11時)について予約状況を調査。19年の同日時点の状況と比較、分析した。 その結果、総客数は19年比0・5%減でコロナ禍前の水準までほぼ回復。一方で予約件数は24・3%も増えた。予約1件当たりの人数が10人以上なのは9割に届かず、かわりに2人以下の予約は55・6%増加。平均人数は2人減の8・3人となり、宴席の少人数化が浮き彫りとなった。 トレタの担当者は「調査対象が全て忘年会とは限らない」と強調。その上で少人数化の要因について、テレワークの定着やオンラインツールの活用による少人数コミュニケーションが一般化し、従業員が気軽に広く誘い合うような機会が減ったことなどを挙げる。 内閣府による景気ウォッチャー調査の先行きに関する企業への聞き取りでは、「若者の忘年会離れ」「ハラスメントを気にして忘年会を見送る企業が多い」などの回答も散見された。 SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人上級研究員は、コロナ禍で忘年会が一度中止されたことにより、「少人数開催でも問題ない」「参加しなくてもいいもの」といった考え方が拡大したと指摘。「この傾向は10年スパンでは分からないが、すぐにコロナ前の状況に戻ることはない」と予測する。また、飲食店にとっては客のグループ数が増え、対応するテーブル数も増えることになるため、「作業が煩雑になり、人手不足もある中で負担が重くなる」とした。