松井一郎・大阪府知事に聞く(全文1)人口減・企業を呼ぶ新産業の柱“観光”
社会保障を支え、日本が成長するため、大阪が成長エンジンのもう一つの極に
── 注目すべきなのは、大阪府はいち早く人口の白書を、昨年には、「大阪府人口ビジョン」や「大阪府まち・ひと・しごと創生総合戦略」をまとめたことです。そこには、今、話があったように、重点的な施策などで都市の機能を保っていかなくてはいけないという考えがあっての動きと捉えていいですか。 はい。日本の国がこれからも成り立っていく、日本が成長していく、これから増えるであろう社会保障を支えていく。そのためには東京一極だけでは、日本をけん引するエンジンとしては、非常に脆弱だと思うし、不安です。ちょっと難しいと思う、東京一極だけではね。 だから、多極分散の中で都市部、二極として大阪が日本を引っ張っていける、けん引するエンジンとなれる都市に、これを成長させていく。これが一番重要なところ、と思って、さまざまな計画をつくっているところです。 【メモ】 ・「大阪府人口減少社会白書」……自治体としていち早く、2012年3月策定。人口減少社会の到来に備え、生活・経済・都市など様々な分野への影響や課題を分析整理し、問題提起を行った。 ・「大阪府人口ビジョン」「大阪府まち・ひと・しごと創生総合戦略」……急速な少子化等による人口減少や、高齢化の進展に対応し、住みやすい、働きやすいまち「大阪」の実現に向け、将来の大阪の人口動態を見据えた「大阪府人口ビジョン」と、今後5年間の方向性をとりまとめた「大阪府まち・ひと・しごと創生総合戦略」を2016年3月に策定した。
将来の人材育成が重要「高校は私学も実質無償」実施
── 今は東京一極集中で、東京圏だけが辛うじて人口増という状態ですが、大阪が人口減の局面に入ったことは、日本の都市部の人口減のモデルケースで、国際的にも注目されると思います。例えば、二極のイメージ、大阪が都市機能を保っていく中で、特に重点的に考えていることはありますか。 目の前の課題を解決するということでは、企業を集めてくるための新たな産業の柱を立てていくということです。大阪では今、観光戦略、サービス業を中心に、観光を一つの大きな産業に育て上げようと取り組んでいまして、これは今のところ、いい形で結果も出てきています。 海外からのお客さんの伸び率、これは東京以上に伸びていますし、僕が知事に就任した2011年、海外からのお客さんは158万人だったけれど、去年2016年は941万人、約6倍になっています。これを考えれば、観光業、観光産業は一つの柱になっている。そこに働く場所がどんどん増えてきている。今、大阪は正社員の有効求人倍率も1倍を超えていますから、働く場所はできてきたかなと。 それともう一つはやはり、ものづくり・製造業をもっと強くしていく。もともと大阪というのは、製造業でつくれないものはない、というぐらい技術力のある中小企業が多いわけで、その製造業に元気を取り戻していくことで、そこに雇用が生まれてくるわけです。