《NewJeansハニのカバーで再注目》松田聖子の『青い珊瑚礁』伝説 1980年9月の『ザ・ベストテン』1位獲得は女性アイドル史の画期だった
今、日本と韓国の若者を中心に、松田聖子の往年のヒット曲『青い珊瑚礁』が人気だという。火をつけたのは、今年6月に日本デビューを果たした韓国の女性アイドルグループ・NewJeansのハニによるカバーだ。ライターの田中稲氏が、同曲をはじめ1980年代にアイドル界を席巻した松田聖子の「かわいさ」の秘密について、改めて振り返る。 【写真】『青い珊瑚礁』をカバーしたNewjeansのハニ。他、聖子ちゃんカットの松田聖子ほか
* * * かわいくなりたい。50代半ばだが、年など関係ない。「かわいい」と言われたい。1ミクロンでもいい、かわいい成分を増やしたい――。 突然どうしたと思われるだろうが、すべて『青い珊瑚礁』のせいである。最近、松田聖子さんの『青い珊瑚礁』が韓国で大ヒットしているというニュースを知り、松田聖子さんを思い出し、「かわいい」を欲する心が吹き荒れている所存……。 あの歌がヒットしたのは40年前、私が小学6年生の時であるが、当時も、チビッ子なりに、「恋の甘酸っぱさを極限までハッピーに表現してみました(ハート)」的な彼女の姿に度肝を抜かれたものである。 再ブームのきっかけとなったK-POPの大人気グループ・NewJeansのメンバー、ハニさんの歌唱も観たが、こちらもなんとかわいいのか。フレアスカートをたなびかせ、後ろに手を組み、ちょっとモジモジする感じで登場するあの姿、正解、ド正解。見事に珊瑚ってる! 「珊瑚ってる」とは、歌う人が自分の持ちうる「かわいい」を全身から爆発させている姿を形容する私の造語だ。フレアスカートという服のチョイスも、ハニさん、わかっていらっしゃる。横揺れと同時に、裾をひらひら泳がせてこそ珊瑚礁!
イントロ、歌い出し、サビ前…隙のない「かわいさ」
さて、最初から熱くなってしまったが、改めて曲を紹介しよう。『青い珊瑚礁』は松田聖子さんのセカンドシングル。リリースは1980年7月1日。これはデビュー曲『裸足の季節』からわずか3カ月後! 昭和のアイドルのリリースサイクルってホントに早い……。 冒頭ですでに数多のかわいさを述べたが、やはり最大の魅力は曲の始まり方。爽快感がハンパではない! こっちが聴く体勢を整えてないうちに、聖子ちゃんがダッシュしてきて、カワイイの暴力でドカッと殴ってくるイメージである。 イントロの軽快さ&聖子ちゃんの笑顔に、心臓の鼓動が早まる。呼吸も乱れる。そこに、美声の高音が心をアッパーカット! 「あ~、私ッのーぅ恋は~♪」 ここまでわずか13秒。すでにクラックラである。しかし「これからですよ!」とばかりに恋する喜びにあふれる歌詞が、脇腹にジャブを入れてくる。あなたと会うたびに全てを忘れてしまうとか、(島に)二人っきりで流されてもいいとか……! 私は思わず目をつぶる。瞼の裏に、浜辺で「えーいっ」「やったなーこいつ、お返しだ!」「キャッ♪」とパシャパシャ波をかけ合う、腹が立つほどのラブラブカップルが映し出される。ああ、妄想で死にそう。 しかし聖子ちゃんは容赦ない。サビ前、いきなり「あなたが好き!」──まさかの超ドストレート告白を叫んでくるのだ。誰とてノックアウトは避けられない。『青い珊瑚礁』、なんという隙のない布陣!