池袋暴走事故遺族に殺害予告で書類送検、成人なら「罰金刑で終結」の可能性もあるが…女子中学生への“適正な処分”とは
女子中学生は今後どうなる?
今回、女子中学生の送検容疑となった脅迫罪や威力業務妨害罪の法定刑はそこまで重たいとは言えず、成人であれば罰金刑で終結する可能性もある(脅迫罪:2年以下の懲役または30万円以下の罰金、威力業務妨害罪:3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。 少年事件においては、14歳以上であればそのすべてが家庭裁判所に送られ(全件送致)、同裁判所によって「不処分・審判不開始」「保護処分」「検察官送致(逆送)」のいずれかの処分が下される。 では女子中学生は今後、どのような処分を受けると考えられるのか。 「少年事件は『少年の健全な成長』を目的に、要保護性という判断材料に基づいて、処分を決めます。本件では、適用となる犯罪自体が重罪にはあたらないことから、その内容の悪質性を理由に逆送することはありえず、少年事件としての処分の可否が判断対象になるでしょう。そして、それは甘い手続きだとは思いません。 今回の犯人が成人であれば、特に逮捕もされず取り調べを数回受けて、罰金刑なりで終わっていたかもしれません。少年であるから、なぜこのようなことをしたのか、その背後に家庭環境などの問題がないかなどをつぶさに調べられ、ただ軽い犯罪だからと済まされず、今後の生活にいろいろな縛りを受ける可能性があります。 少年事件の手続きを受けるから優しい、刑事罰だから重いと単純化できるものではないことを、世間には知ってもらいたいです」(杉山弁護士)
被害者の処罰感情が与える影響
冒頭のように、松永さんは女子中学生が書類送検された際に「悩みましたが、未来ある未成年が、これからより大きな過ちを犯さないよう、私は先人として、毅然とした対応を取ることが重要だと考えました」とコメントしている。 成人の事件では、被害者の処罰感情が判決に影響を与えることもあるが、未成年の場合はどうか。杉山弁護士は「影響は与えるが、成人でも未成年でも、主たる要素ではない」という。 「刑事事件においては適正な手続きのもと、成人ならその犯罪行為に見合った制裁を、未成年なら保護育成を受けることによって更生を促し、その結果、社会全体が守られることが大切です。 池袋暴走事故に関しては、刑事事件において許容されている主張や反論すら封じられかねない社会の風潮がありました。たとえば、控訴を許さないとなれば、被告人の裁判を受ける権利自体が奪われてしまいます。そもそも、どういう犯罪だったのかを確定させる手続きを経たから、ある事実があったとして人を断罪できるのであって、その事実を確定させるプロセスすら攻撃の対象にするのは、刑事司法のあり方として良くないものでした。 こうした風潮が、袴田事件のような冤罪事件も引き起こしかねないのです。袴田事件の時も、そもそも何をしたのかという部分を、当たり前にわかっていると思いこんでいる人たちや報道が、袴田巌さんが無罪を主張して最高裁まで争い、かつ再審請求もしたことに対して『人殺しのくせにひどい』とやっていました。まず、自分はどんな処分が適切なのかについて語る前提となる事実を知るものではないと、謙虚に認識すべきです。 当事者である松永さんが厳しく望まれるのは、当然許容されたことだと思いますが、それ以上の影響を外野が与えようとすべきではありません」
弁護士JP編集部