日本人観光客はインバウンド客よりマナーが悪かった? 「備品盗難」「泥酔」「部屋汚し」…国の補助金で客層が悪化?
Go Toトラベル時は「備品の一切合切を持ち帰る」旅行客も
“旅慣れ”という言葉を使いながら実態を語ってくれたのは、東京のホテル業界発展を目的に設立され、200以上のホテルが加盟する「東京ホテル会」の代表・髙部彦二氏だ。 「あまり言いたくないのですが……Go Toトラベルは補助金が出て安く宿泊施設に泊まれたので、“旅慣れ”していないお客様もたくさん来たんです。 そのなかには電気ケトルやグラス、タオルなど、備品の一切合切を持って帰った人もいて、被害金額がウン十万円という驚きのケースもありました。まぁ、これは犯罪として粛々と対応したのですが」 こうした迷惑客が問題となったことで、国会では旅館業法の改正議論が進み、昨年12月から全国で改正旅館業法が施行された。 これにより現在では、たとえば泥酔して従業員に何度も介抱を依頼するなど、客が過剰なサービスを繰り返し求めた場合、旅館やホテルは宿泊を拒否できるようになった。 「Go Toトラベル実施中は、私どもとしてはそれでご飯を食べているということで、(客の)マナーについてはもうあきらめていたんですよ。そもそも日本では、三波春夫の『お客様は神様です』が誤解されて伝わっていて……。 でも、最近だと『カスハラ』といった言葉もありますし、従業員のほうが大切という風潮に変わってきています。マナーの悪い客に対する法律ができたのはとても助かりますし、ずっと訴えかけてきてよかったと思います」(同前)
「マナーが悪いというより、“慣れ”の問題」
Go Toトラベルの利用客によるバッドマナーについては、財団法人宿泊施設活性化機構(JALF)の事務局長を務める伊藤泰斗氏も同意見だ。 伊藤氏は「国から補助で費用としては安くなっている一方で、客層が変わり下がり、マナーが悪くなったという一面はある」と分析しつつ、“マナー”という尺度が千差万別だとして、線引きの難しさも口にしている。 「たとえば民泊では、帰るときに、使った食器を洗うルールになっている施設が多いんですが、洗わないのは圧倒的に日本人なんです。中国人を含め、外国人はほぼ洗っていきます。 でも、これらはマナーが悪いのではなく、“慣れ”の問題じゃないかと私は思っていて。日本人は、サービスにタダでアクセスできるのが当たり前だと思っているだけなんです。各々が常識だと思っていることに対して、どこから非常識かと決めるのは難しいんですよ」 宿泊現場で多くの問題を生み、Go Toトラベルならぬ、“Go Toトラブル”化を引き起こしていた当時の日本人観光客。 一方、その後の入国規制緩和や円安の影響などで激増した訪日外国人のマナーの実態はどうなのか。それについて、前出の髙部氏は「外国人も例外ではない」と語る。 「ドライヤーや電気ケトルなど、備品を片っ端から持って帰るというのが、一時期はありましたね。ただ日本人と違うのは、国に帰ってしまうと捕まえられなくて……。 でも、最近ではツアー会社も強く注意喚起してくれているので、少しずつ減ってきました。盗難が発覚したときもツアー会社の方に言って、持って帰った観光客に『あなたでしょ? 返して』と取り返してもらっています。 あとは、インバウンドの方々だと、大声で騒いだり、部屋を汚したりする客が多いですね。日本人の方はそんなに汚さないんですけど、海外の方は部屋で食い散らかしたり……。 壁なんかを汚されると、大変なことになっちゃいます。ガラが悪いというか、日本人にはないマナーの悪さっていうのはありますね」