国民民主“玉木個人商店”からの脱却 キーマンは20歳で司法試験合格の超エリート 知られざる素顔を直撃
女性問題で3か月の役職停止処分となった玉木氏に代わり、今月から代表代行に就任
国民民主党が、日増しに存在感を強めている。法案成立のキャスティングボートを握り、今月11日、「年収103万円の壁」の見直しの実現に向けた合意文書を自民・公明の両党と交わした。現在、同党を率いるのは、59歳の古川元久衆院議員。女性問題で3か月の役職停止処分となった代表の玉木雄一郎氏に代わり、今月4日から代表代行を務めている。東京大法学部3年の20歳で司法試験に合格し、司法修習を受けずに国家公務員試験をへて大蔵省(現・財務省)へ入省。文字通りのスーパーエリートだが、その素顔は広くは知られていない。そこで、ENCOUNTは古川氏をインタビュー。歩んだ道のり、政治家としての志、大事な時期にスキャンダルを起こした玉木氏への思いを聞いた。(取材・文=佐藤佑輔、構成=柳田通斉) 【写真】東大の入学式に参加する当時18歳の古川氏 大手一般紙や通信社による最新の世論調査では、国民民主党の政党支持率はいずれも10%を超えている。ついには野党第1党の立憲民主党を上回り、自民党に次ぐ2位になった。求めてきた「103万円の壁」の見直しについても、自民・公明両党が引き上げに合意。引き上げ額を巡っては議論が続いているが、今後もキャスティングボートを握る状況だ。 一方で衆院選後の先月11日には、代表の玉木氏が不倫疑惑を報じられ、事実関係を認めて謝罪。党では今月4日から、役職停止3か月の処分とした。この間、代表代行を務める古川氏とは一体どんな人物なのか。先日、記者は議員会館を訪れた。そして、いきなり驚かされた。想定外に声が大きかったからだ。 「初めまして。本日はよろしくお願いいたします」 古川氏は、そのままの声量で生い立ちを語り始めた。 「今年、101歳を迎えた大正生まれの父は、酒が飲めず真面目で人付き合いが苦手な性格でした。出世とは無縁の万年平社員。母は内職もしていましたが、一生懸命働いていても生活は豊かにならない。両親の姿を見て『真面目に働いている人が報われる世の中を作りたい』と思ったことが自分の原点です」 「世の中を変えるなら官僚。官僚になるなら東大」と思い、塾に通うことなく東大文科一類に文に現役合格。入学後、実際に国家公務員となった東大OBの話を聞くうちに、抱いていたイメージと現実のギャップに直面したという。 「官僚の『9時―5時』は午前9時から翌朝5時という世界。激務な世界に不安もありましたし、当時、官僚の先輩は全然ごちそうしてくれなかったんですよね(笑)。いつも羽振りが良かったのは弁護士の先輩。それで『弁護士を目指してみるのも悪くないな』と思いました」 当時の司法試験合格者の平均年齢は28歳。親からは「そこまで面倒を見る金はない」「どうしてもなりたいなら在学中に取れ」と言われ、東大の図書館にこもって自習。ここでも試験対策の塾などには行かず、当時最年少の20歳で司法試験合格を果たした。そして、「将来有望な金の卵」として多数の弁護士事務所から破格の待遇で勧誘を受けた。だが、「金もうけをしたいわけじゃない」とこれを固辞。高給な弁護士の道を蹴り、初心に帰って官僚となる道を選択した。 「『すぐにこんな車が買えますよ』などと言われ、一気に覚めました。4年生で受かっていたら、そのまま弁護士になっていたでしょう。早くに合格したことで冷静になれて、『何のために東大に来たのか』を考えることができました。結局、司法修習を受けなかったので弁護士登録もしていません」