「博士号=オタク・分厚い眼鏡・コミュ障」は間違い! “不遇の博士”の出口を探る
では、博士人材の採用状況はどうなっているのか? 経団連のアンケートによると、博士人材の採用状況は採用者全体のわずか3%。採用方針としては「学士や修士と分けずに採用している企業=64%」「分けて採用を行っている企業=15%」「両方の場合がある=21%」となっており、博士人材を他と分けて採用している企業の業種は、医薬品、機械、電子機器、輸送用機器、精密機器などがあるという結果に。 博士人材が企業への就職においてあまり評価されない現状に対し西田氏は「社会全般が博士に対して『オタクで分厚い眼鏡をかけており、コミュニケーションに難がある』などというイメージが強い印象だが、実態は異なる。実際の博士は英語でのプレゼンテーションや論文執筆を行うため語学に長けた人が多く、研究だけではなく、実験の管理や調整、複数のタスクの進捗管理なども日常であるため、一般のビジネスパーソンよりもコミュニケーション能力が高いことも少なくない。さらには経理や事務、研究も全て1人で行えるようにならなければならないなど、『自律』に対する意識が高い。前述の誤ったステレオタイプなイメージは早急に正してもらいたいが、博士号を持ってる人と接する機会が少ないためになかなか理解が進まない」と述べた。 さらに西田氏は「博士課程の“出口”として大学の就職先を増やすことが重要だ」と強調した。 「出口についてはいくつかに分けて考える必要がある。一般的には博士は就職で苦労するが、実は一部の情報分野などにおいては外資系企業から高い給料で採用されるなど、引く手数多であり、むしろ大学教員・研究者のなり手が不足している。そのため、人気分野は現状のように進める一方で、その他の分野についても“火が消えないように”しっかりと後継者を育てられる環境を作っていくべきだ。なぜなら『イノベーションは予想もつかない組み合わせがあってこそ生じる』から多様性が重要であり、また知的蓄積は一度失われてしまうと散逸してしまい、誰も教えられる人がいなくなりかねないからだ。現状は少なくない分野でそうなりつつある」 「今政府は民間企業への就職に目を向けているが、世界的に見ると博士を持っている人は研究者になることが多い。私立大学に求めるのは難しいかもしれないが、国立大学や国立の研究所を中心にポストを増やして常勤教員ポストをもっと増やすべきだ。就職できるポストがあれば博士課程に安心して進学できるようになる」