「裏金」巡り自立激戦 旧上福岡票 勝負を左右 衆院選埼玉8区(所沢市、ふじみ野市、三芳町)
8選を目指す自民県連会長の前職柴山昌彦(58)は18日、区割り改定で7区から移った旧上福岡市地域を回りながら、「いろいろな声がある。厳しい声も頂く」と険しい表情を浮かべた。政治資金の収支報告書不記載問題を受け、党の公認は得たものの、比例との重複立候補は認められなかった。「大変厳しい選挙戦」と自身、陣営を引き締めながら支持を求めている。 政治の信頼回復なるか 衆院選公示 埼玉16小選挙区に66人立候補 女性候補は倍増の17人
立民の新人市来伴子(47)。対立候補の「個人攻撃」を控える市来だが、15日の公示日に応援に駆け付けた同党ナンバー2の幹事長小川淳也はマイクを握ると、「きょうの朝、1千万円のところに行ってきました。お昼は500万円、そしてここ、900万円。何のことか分かりますか」と問いかけ。支援者からは「裏金」と鋭い声が飛んだ。 ■政治の在り方問う 柴山は今年2月に会見を開き、896万円の不記載について経緯を説明して陳謝。ラストサンデーの20日には、群馬県知事の山本一太が応援に駆け付け、「柴山は本当にクリーンな政治家なんです。(不記載について)党内でもずっと反対して訴えていた」と擁護した。7回の選挙のうち、比例復活したのは旧民主党に政権を奪われた2009年総選挙のみ。9万票余りを集めるも旧民主候補に敗れている。 市来は「政権交代がないから利権や癒着がある。このような政治でいいのか、判断をしてもらう選挙になる」と自民を批判し、政権交代を呼びかける。それぞれ新人で維新の市野一馬(40)、共産の平井明美(80)も「政治改革」を訴える。市野は、資金のかかる政治や選挙の制度改革を掲げる。平井は「(自民)総裁選でも企業献金、政党助成金をやめるといった人はいなかった」と厳しく責める。「今回は『政治とカネ』が大きな争点だ」
■地元の信頼根強く 20年前も、「政治とカネ」を争点に論戦が繰り広げられていた。2003年、8区で初当選した自民議員の選挙違反で、市議ら複数人が逮捕、起訴される事態となった。翌年、当時の現職の辞職に伴う補選で、同党幹事長だった安倍晋三の支援を受け、自民の公募第1号として38歳の柴山が初出馬。「政界浄化」を掲げ、第一声で「しがらみや因習を改革して、正直者が報われる社会をつくります」と誓った。 自民批判をはねのけて初当選し、「誠実さ」「クリーンさ」を印象づけてきた。地元所沢では「誠実なイメージが強い。(政治資金不記載問題は)柴山さんには影響はないんじゃないか」(40代会社員男性)、「雨の中、落とした資料を拾い集めてもらったことがあると(人から)聞いた。腰が低い対応をしているのを見たこともあるので、人柄が良いと思う」(50代パート女性)との人物評も目立つ。 ■3万票が鍵を握る 今回から旧上福岡市地域が7区から移り、ふじみ野市の分割が解消された。前回選挙の同地区の有権者数は5万321人。投票率は50・70%で、投票数は2万8184票。そのうち自民候補者票が1万1890票、立民候補者が1万1226票と、拮抗(きっこう)している。前回衆院選で柴山は10万4650票、事実上の野党統一候補が9万8102票で6千票の僅差だった。柴山が上福岡票をどれだけ取り込めるかが鍵になりそうだ。
候補者がふじみ野市内の活動に力を入れる一方、市民の関心はあまり高くないようだ。前回衆院選で立民の候補者を支持したという主婦(62)は候補4人のポスターを見て、「全員、全く知らない…」と途方に暮れる。「政党でなく、個人を見たい。これから演説も聞いて、ゆっくり考えたい」。陣営は「市内は興味が薄いとは感じる」と苦笑い。別の関係者も「全然浸透していない。重点的に回る」と気合を入れた。=敬称略