「白神ねぎ」が好調 豪雨乗り越え、初の販売20億円超 秋田
白神山地のふもとに位置し、東北有数のネギ産地として知られる秋田県能代市を中心に、JAあきた白神(本店・能代市)が栽培に取り組むブランド「白神ねぎ」の販売が好調だ。品質の高さと首都圏市場への周年供給の確立に加え、高単価による取引が大きな要因。今年度は約4600トンを出荷し、販売額が初めて20億円を突破した。近年の豪雨で畑地が被災するなど幾多の困難を乗り越えての記録に栽培農家の喜びもひとしお。2025年1月28日には能代市で記念祝賀会を開く。【田村彦志】 【写真まとめ】冠水による水圧で傾いたネギ 「2年続きの豪雨災害で心が折れそうになったが、ここまで来られたことは感無量だ」 同JAねぎ部会長の大塚和浩さん(63)は2022年8月と23年7月に秋田を襲った記録的な大雨で砂地の畑地が冠水した、悪夢のような光景を今も忘れることはない。復旧に日々心を砕き、困難を克服してきた自信と誇りを胸に「一大産地化に向け、さらなる飛躍を目指したい」と次のステップを見据える。 日本海に面した能代市は、古くから野菜栽培が盛んな土地柄。ネギは主に河戸川、四日市、須田地区などで栽培され「能代ねぎ」の名称で出荷していた。 大塚さんが秋田県立農業短大を出て、河戸川地区で父親の代から取り組むネギ栽培を始めたのは21歳の時だ。今では18ヘクタールを経営する大和農園の代表を務める傍ら、ねぎ部会長として能代市と藤里町に180人を数える農家をリードする。 12年には、世界自然遺産・白神山地の呼称を生かした「白神ねぎ」を商標登録。その栽培面積は現在、過去最大の226ヘクタールに及ぶ。季節ごとに春ネギ、夏ネギ、秋冬ネギ、そして雪の畑地から掘り出し冬期間に出荷する雪中ネギを収穫する周年供給態勢を確立した。 作付面積の拡大と同時に、部会員らによる独自の抜き打ち検査などで品質を維持。さらに販売単価の向上などを販売戦略の柱に据える。 全国の自治体ではそれぞれの地域の特産品の名称を冠した部署を設置して売り込みに力を入れている例が少なくないが、能代市は18年4月に機構改革で全国に例のない「ねぎ課」を新設し、栽培技術の普及、販売戦略、担い手の育成を後押ししてきた。 JAあきた白神によると、15年度に念願の10億円の販売額を達成以来、販売額は右肩上がりに伸び、19年度にJA、県、行政が一体となった「20億円販売達成プロジェクト」がスタートした。22年と23年の大雨災害で畑地が被災し、軟腐病などの病害に悩まされたが、行政側のサポートで栽培管理を徹底。海外市場を視野に台湾への輸出を試みるなど、販売総額も17億円台を維持してきた。 今年度は生育が比較的良好だった上、夏以降の高温の影響で関東産の出荷量が落ち込んだこともあり、1キロ当たり400円台の高値で取引され、販売額は12月16日現在で20億5600万円に上る。 部会長の大塚さんは「新規や若手の参入も進んでおり、30億円販売達成も夢ではない」と意気込む。能代市ねぎ課の担当者も「ネギ栽培にかける農家の情熱が、目標をクリアする大きな支えとなっている」と話している。