衆院選、町内会の特定陣営応援はOKなの? 候補者妻のあいさつ回り、文書で参集促す
衆院選のさなか、1枚のファクスが編集局に届いた。広島市内のある町内会が住民に配った案内文。特定の陣営のあいさつ回りに参集するよう促す内容で、「これどう思われますか?」と書き添えられていた。町内会は、政治的活動とどう距離を保つべきなのだろうか。 【写真】広島市内の町内会が住民に配った、特定の陣営の選挙活動に関する案内文㊤(画像の一部を修整しています) 案内文は、公示直後の17日付。ある政党の候補者の妻が来る日時と場所を記し、「お誘いあわせ是非お出かけ下さい」と呼びかけていた。 当日、会場には約40人が集まった。候補者の妻は「ご支援と支持を最後までよろしくお願いします」とあいさつし、一人一人と握手を交わした。町内会長は、参集を呼びかけた理由を「(この候補者は)昔から地域とつながりがあるからね」と説明した。
違和感を覚える住民も
一方で、案内文に違和感を覚える住民もいた。40代男性は「この人を応援するものだと圧をかけられているよう」。30代女性も「なんか古い感じ」と受け止めた。 町内会による選挙運動に線引きはあるのか。地方自治法は、同法に基づく「認可地縁団体」として法人格を得た町内会などについては、「特定の政党のために利用してはいけない」と規定する。逆に、任意団体の町内会には法的な縛りはない。 広島市市民活動推進課によると、市内の町内会の多くは任意団体のため「総意があれば、政治活動への協力は禁止されるものではない」とする。ただし、特定政党や候補者の応援で住民の「総意」を得られるとは考えにくいため、政治活動への協力は事実上困難と言える。同課は「半強制だと疑われるような呼びかけをしないなど、誤解やトラブルがないよう十分議論してほしい」と求める。 実態として町内会が政治活動と結び付きやすいことは、過去の調査からもうかがえる。政治学者の辻中豊氏たちが2006年度に全国約1万8千の自治会や町内会に尋ねた調査では、53・3%が地方議員選挙で「推薦・支持活動を行ったことがある」と回答。一方で「以前はしていたが今はしていない」も15・3%あり、当時から縮小傾向にあったことが分かる。