「毒をもって毒を制す」元対立組織の極左・松崎明との「蜜月」...敵を取り込んだ日本の改革者・葛西敬之の「本当の」狙い
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第21回 『政界を揺らす転機! …闇将軍・田中角栄を破った意外な人物による「最悪の裏切り」』より続く
抱き込んだキーパーソン
とどのつまり国鉄の地域分割は、第二臨調の亀井正夫や加藤寛の案に葛西たちが乗っかった結果である。あるいは政治、行政における田中支配の崩壊という変化がもたらした産物ともいえる。葛西は三塚博ら新たな自民党運輸族議員を味方につけ、分割民営化改革の急先鋒として本格的に国労潰しの動きを加速していった。 そこには、もう一人のキーマンが存在する。葛西らの所属した国鉄時代の元職員局幹部が振り返った。 「国鉄の分割民営化で国労を敵に回した葛西が抱き込んだ相手が、動労委員長の松崎明でした。いくらなんでもそれは危険だと井手たちは逡巡しました。けれど、葛西はお構いなしでした」 国鉄分割民営化では、それまで国労と手を携えてストライキを展開してきた国鉄動力車労働組合(動労)が、葛西たち三人組に協力し、分割民営化に一定の役割を果たしている。その判断をしたのが、動労の委員長だった松崎明である。 日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派、通称「革マル」創設時の副議長として極左運動を率いてきた松崎は、マル生闘争で名を成した。「鬼の動労」にとっては、国労から日本の労働運動のイニシアティブを奪う絶好の機会に見えたのだろう。松崎は国鉄分割民営化にあたり、かの有名な「コペルニクス的転回」(コペ転)を宣言し、葛西たちに力を貸した。国鉄が分割民営化された結果、国労が事実上解体され、動労が大きな力を握ることになる。