日本に生まれても外国籍なら犯罪者予備軍?…ホテルが求める法的根拠ない要請「在留カードを提示して」 香川県は「人権上問題がある」と通達
従業員の証言とはやはり一致しない。ただ、香川県警の担当者はこうも話していた。「自己申告で日本の住所を書いても、客観的に見て怪しいと思ったら身分確認をお願いするというのが、警察のスタンスだ」 ▽「民族名を名乗るなと言うのか」 今回のようなケースは李さんだけではない。日本人が知らないだけで、被害者が泣き寝入りしたり、トラブルになったりしたことはこれまでも頻繁にあった。次のように、裁判になった例もある。 大阪市在住の在日コリアン3世の歌手、趙博さんは2017年9月、公演のために利用した東京都千代田区内のホテルで、在留カードや特別永住者証明書の提示を求められた。拒否したが、何度も要求する従業員と口論に。結局、宿泊できなかった。趙さんは「宿泊を拒否された」としてこのホテルを東京地裁に提訴。訴訟は2019年9月に和解した。 裁判資料によると、このホテルの従業員も法廷で「警察署の指導があった」と証言していた。趙さんは憤りを隠さない。
「定住者と旅行客を区別せず『外国人はみな犯罪者予備軍』みたいなやり方はやめてほしい。名前や見た目で外国人かどうか判断することも差別なのではないか」。こう語った上で、別の問題もはらんでいると指摘した。「本名宣言」への影響だ。 朝鮮半島が日本の植民地だった時代、朝鮮人は日本風の名前へ改名する「創氏改名」をさせられた。在日コリアンはこうした歴史的経緯から、戦後、日本名である「通名」ではなく、民族名の本名を名乗ろうという運動を続けてきた。 しかし、ホテルで本名を名乗れば、また不必要な身分確認を求められる恐れがある。「日本名ではなく本名を名乗り、自分の民族性を回復することが『本名宣言』。ホテルの対応は『疑われたくなければ本名を名乗るな』と言っているのと同じだ」