日本に生まれても外国籍なら犯罪者予備軍?…ホテルが求める法的根拠ない要請「在留カードを提示して」 香川県は「人権上問題がある」と通達
「人権感覚を磨いてきたつもりだったけれど、こんなことが起きているなんて知らなかった」。西川さんは協議会会長の長尾香織さんらと話し合い、香川県に連絡。改善を求めた。 ▽合理的理由なく対応を分ければ「差別」 連絡を受け、トラブルの内容を把握した香川県人権・同和政策課は今年3月、人権・同和政策課長などの名前で以下の内容の通達を出した。 「日本国内に住む外国人に、法令等の根拠に基づかない旅券等の提示を求めることは人権上問題があります。旅館業法の趣旨を理解のうえで対応してください」 「宿泊者が国外の地名を書いた場合は旅券番号の確認が必要ですが、国内の住所を書いた場合、外国人と推察できても、それ以上の確認は法令等では求められていません」 通達を出した意図を知ろうと人権・同和政策課に尋ねると、担当者は淡々と述べた。「旅館業法が定めていることを周知しただけです」 一方で、関係者からは歓迎する声が上がった。大阪市のNPO法人「多民族共生人権教育センター」の文公輝事務局長は高く評価。「合理的な理由もなく国籍によって対応を分けるのは差別だ。全国で被害報告がある現状で、本来なら周知は国がやるべき仕事だった」
香川県に連絡した協議会会長の長尾香織さんは、李さんに感謝した。「全員が安心して過ごせる社会にしたい。そのためには見過ごしてはいけないことがたくさんある。本当に良い学びをもらいました」 ▽法令上、根拠はない ここで旅館業法の中身をもう一度確認しておきたい。この法律は、公衆衛生の向上などを目的に宿泊事業者の義務などを定めている。所管する厚生労働省の通知によると、宿泊施設側に客の身分確認を義務づけているのは「宿泊者が自らの住所として国外の地名を告げた場合」に限られる。 厚生労働省がインターネット上に公表している一問一答を見ると、こうある。 Q「国内に住所を持つ外国人宿泊客に対して、在留カードの提示やコピーを求めてもいいでしょうか」 A「必要に応じ自治体等の判断で求めることは差し支えございませんが、法令上には根拠はございません。宿泊者が拒否する場合は強制することはできません」