読書好きのヤクザの親分が獄中で読む本とは…刑務所の中のヤクザの日常のリアル
現代ヤクザ事情#1
ここ数年暴力団員数の減少は下げ止まり、増減なく横ばいになっている。ヤクザ取材歴25年以上、暴力団組員、幹部、組長に取材を重ね、業界にパイプと人脈を持つ尾島正洋氏が現代ヤクザのリアルに迫った。 【画像】ヤクザが刑務所で好む書物は
新刊『俺たちはどう生きるか 現代ヤクザのカネ、女、辞め時』(講談社)より一部抜粋してお届けする。
刑務所でのヤクザの日常
●服役経験がある指定暴力団古参幹部 トラブルになっていた組織の連中とケンカになり、傷害事件などで数回にわたって刑務所に入った。通算すると10年以上は服役の経験がある。警察に逮捕されると留置所暮らしとなる。検察が起訴して捜査がほぼ終了すると拘置所に送られる。ここではまず全裸になってケツの穴まで調べられる。裁判所に出廷して刑が確定すると刑務所だ。 ヤクザだから特別ということはあまりないが、刑務所内ではやはりヤクザということで受刑者の間ではそれなりの扱いをされる。 刑務所内では、朝は午前7時前に起床し朝食を取り8時から刑務作業となる。10時から15分ほど休憩があり12時から昼食。午後1時から再び作業で、午前と同様に休憩をはさみ5時に終了し夕食。その後は毎日ではないが風呂や自由時間などがある。午後9時には消灯となり就寝となるのが基本的な生活パターンだ。 刑務作業には作業報奨金が支払われることになっているが、月に3000円程度だった。自分は金属加工の仕事をやってナベなどを作っていた。簡単な作業だが、真面目にお勤めしていた。しかし、夜はさすがに9時には寝られないから困った。 自分の場合は事件を起こして逮捕され、一審判決で実刑が出た後に控訴しなかった。量刑が納得できるかどうかは別として、これを受け入れる。裁判所にも検察庁にもこれ以上は迷惑をかけない。裁判所で言われたとおりに服役する。
服役もヤクザとしての仕事の一環
●別の指定暴力団幹部 一審で結論が出たら従う。控訴はしない。 ヤクザになって社会に迷惑をかけるかもしれない存在だから、警察に逮捕されて裁判所で結論が出たらそれに従う。控訴していつまでもぐずぐずしているより潔く服役するのがお勤めだ。それが渡世人というもの。ヤクザはムショ暮らしと背中合わせ。服役もヤクザとしての仕事の一環のようなものだ。 刑が確定した受刑者を刑務所に割り振るにあたって、犯罪傾向の進度が進んでいない者は「A級」、進んでいる者は「B級」と区分けされる。暴力団構成員は当然のようにB級に分類される。さらに、刑期が10年以上は通称でロングと呼ばれ、長期受刑者が多い刑務所に収容される。 B級を主に収容している刑務所は東京の府中や大阪、神戸、広島、福岡など大都市にある。恐喝事件で逮捕されて有罪判決が確定した六代目山口組の髙山清司若頭が服役していたのも府中刑務所だった。 2019年10月に出所した際には、六代目山口組と神戸山口組が分裂し対立抗争の真っ最中の時期だったこともあり、新聞やテレビで大きなニュースとして報道された。B級を収容している刑務所では、受刑者の半分以上が暴力団関係者ということもあるという。 暴力団の対立抗争事件などが起きている場合は、対立する組織の組員同士が刑務所内で鉢合わせすれば、その場でケンカになりかねない。こうした事故が起きないよう刑務所で事前調査が行われる。 刑務所内の部屋は12畳の雑居房に6人が基本だが、受刑者が多くなると7~8人が詰め込まれる。