「勉強しなさい」と言われるタイミングが絶妙だった…「クイズ王」伊沢拓司の実家にあった本、流れていたテレビ
■マインドセットは一朝一夕では身に付かない 僕が自分が育った環境について話してきたのは、それがたまたま学びへのマインドセットを得やすい環境だったからです。両親に学びへのモチベーションがあり、家に本があり、自由な時間がある、みたいな。 これは偶然得たものだし、その環境を再現するのはカンタンではないし、環境を再現しても同じようになるかはわかりませんよね。たとえば地域だけ見てもそうで、日本には書店がぜんぜんないような場所も少なくありません。そういうところで生まれ育ったら、読書習慣を身に付けるのはけっこう大変ですよね。僕もブックオフに救われましたし。 あるいはご両親の習慣。たまたま、僕の両親は新聞を読んだり歴史ドラマを見たりする習慣がありましたけれど、そうでないご家庭だって多いでしょう。そもそも歴史ドラマが教育につながるかもわからないし、バラエティを見ていたほうが語彙が増えるみたいなこともあるかもしれない。 マインドセットが一朝一夕では身に付かないのは、結局のところだいぶ運要素が大きくて、かつゆっくりゆっくり育まれるしかないものだからかなと思います。 じゃあどうやって手に入れればいいのかというと、これはもう幸運を祈りつつ環境を整えて、何かしら芽が出てきたらそれを伸ばすために習慣化させていくしかないですね。「新しい知識を手に入れるって楽しい」「学ぶってエキサイティングだ」と感じる経験を積み重ねれば、時間はかかりますが、学びへのマインドセットが身に付くはず。 成功体験の繰り返しがキーになるわけで、そのためのツールの一つとしては、クイズは有効だろうな……みたいなことがひとつ、QuizKnockのやりかたへとつながってきますね。 ■クイズ王みたいになる必要はどこにもない クイズは学びへのマインドセットを身に付けるのに適した要素を持っていますよね。 学ぶ楽しさを体得する一番シンプルな方法は、成功体験を積むことです。「わかった!」「問題が解けた!」とか、ちょっとしたものでいいんですけど、成功体験による自己の肯定が学ぶモチベーションになり、また学んで成功するからまた自己肯定感がたかまって、いいサイクルが生まれるわけです。 学びの成功体験は本当になんでもいい。小さな成功の積み重ねが、モチベーションを繋いでくれます。そして、クイズはすごく手軽に成功体験を得られるんですよ。短い時間で出来て、その場ですぐに正解/不正解が出ます。試行回数を稼げて、偶然も含めた小さな成功体験を得やすいんですよね。うまくいけば短時間で何度も気持ちがいいわけです。 別にクイズ王みたいになる必要はどこにもなくて、一問の正解を喜べれば、それは成功体験であり、ほんのちょっと学びへとポジティブな一歩を進めたことになります。そういう小さな成功をきっかけにして、少しずつ学びの楽しさを知り、最終的にはポジティブな習慣付けが行われたら嬉しいですね。 ---------- QuizKnock(クイズノック) 伊沢拓司が中心となって運営する、エンタメと知を融合させたメディア。「楽しいから始まる学び」をコンセプトに、何かを「知る」きっかけとなるような記事や動画を毎日発信中。YouTubeチャンネル登録者は235万人を突破(2024年10月時点)。 ---------- ---------- 伊沢 拓司(いざわ・たくし) クイズプレーヤー TBS系列の人気クイズ番組「東大王」でおなじみのクイズプレーヤー、起業家、タレント。1994年、埼玉県生まれ。1994年、埼玉県生まれ。暁星小学校、開成中学・高等学校、東京大学経済学部を経て、同農学部大学院に進学。TBSのクイズ番組『東大王』で活躍。2016年に立ち上げたwebメディア『QuizKnock』で編集長を務め、19年には株式会社QuizKnockを設立。CEOに就任, YouTubeチャンネルの制作やウェブメディアの運営を行っている。近著に『勉強大全』(KADOKAWA)など。 ----------
QuizKnock、クイズプレーヤー 伊沢 拓司