牛乳の2割から鳥インフルを検出、米国で乳牛に感染が広がる、安全性を専門家に聞いた
ウシを殺処分すべきか
まず理解すべきは、ウシの感染が米国内でどの程度広がっているかはわかっていないということだ。感染したウシが死亡したケースがある一方、無症状のウシも存在することから、このウイルスは、ウシにとっては鳥の場合ほど致命的ではないと考えられる。したがって、「多くの群れが感染していながら、明確な病気の兆候を示していない可能性があります」とウェビー氏は言う。 また、WHOによれば2022年には67カ国で1億3100万羽を超える鳥がH5N1ウイルスにさらされたために処分されているが、今のところ米国内では、ウイルスに関連するウシの殺処分は行われていない。その理由は、このウイルスがウシから発見されたのは2024年3月末であり、処分に関する方針がまだ存在しないうえ、家禽の場合とは異なり、ウシには「全身にわたる感染」が見られない点だ。 事実、感染したウシは大半のケースで軽度の症状しか示さず、ほとんどが1週間から10日以内に回復している。 米農務省は4月末までにテキサス州、ニューメキシコ州、サウスダコタ州、コロラド州、アイダホ州、ミシガン州、オハイオ州、カンザス州、ノースカロライナ州の乳牛でH5N1の感染を確認しているが、ウェビー氏によると、全国的な検査は今のところ行われておらず、ほかの州も汚染されている可能性が高いという。 また、ウシ同士の間で感染がどのように起こっているのはまだわかっていない。今のところ有力なのは、搾乳のプロセスに用いられる機器を介して広がっているという説だ。「感染がどのように広がっているかを把握できれば、それを食い止められる可能性は十分にあります」 また、牛肉製品のウイルス汚染を示す証拠はなく、たとえ汚染されたとしても、冷凍や調理によって残存するウイルスはすべて死滅する可能性が高い。 「このウイルスは事実、かなり弱いのです」とウェビー氏は言う。「加熱やpH(酸性やアルカリ性を示す指数)の変化に敏感で、宿主の体外にいることが非常に苦手です」。このため現在、食料関係でウェビー氏が唯一懸念しているのは、殺菌していない牛乳を飲むことから生じる問題だという。