身体拘束が入居者の”生命力”を奪っている!なぜ介護施設で”身体拘束”はなくならないのか…背後にあった介護施設の『傲慢な思想』
2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務める筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。 『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第16回 『お年寄りの『自立』には家族の協力が不可欠…親が介護施設で快適に過ごすために子どもができること』より続く
事故のリスクと身体拘束をどう考える?
身体拘束とは、動きたいと思っているお年寄りの気持ちを無視して、動けないようにすることです。 手にはめるミトンや車椅子に縛りつけるためのY字ベルト、鍵などの道具を使って縛ったり閉じ込めたりするフィジカルロック、睡眠薬などの薬を使って眠らせたりボーッとさせたりするドラッグロック、「じっとして!」「ダメダメ!」など、言葉を使って行動を制限したり中断させたりするスピーチロックといった方法があります。 こうして一方的に行動を制限すると、制限されたお年寄りは不信感や絶望感を抱き、しだいに意欲が低下し表情がなくなっていきます。 この状態が長びけば気力も体力も低下して寝たきりとなり、場合によっては死に至ることもあります。身体拘束されたお年寄りはもちろんのこと、拘束した職員やそれを見ていた職員、そして何よりお年寄りの家族をつらい気持ちにさせてしまいます。 このように、身体拘束をしてもお年寄りにも私たち介護職にも何もいいことはないのに、一部の介護現場ではいまだに身体拘束が行われています。なぜでしょうか。 そこには、「お年寄りは縛らないと転ぶ。転んで痛い思いをするのはお年寄りだから、身体拘束をするのはお年寄りのため」という考え方があるからです。