仲間と共に歩む京都精華学園の仕事人・桃井優「みんなが支えてくれるから思い切ってプレーできる」
全国未経験の中学時代から一転、優勝チームのスタメンに
『Softbank ウインターカップ2024』の開幕直前ということで、大会特集号の「月刊バスケットボール2025年2月号」に収まりきらなかった注目選手やトピックスを紹介していく。 本日は女子優勝候補の一角、京都精華学園の桃井優だ。 今年度の京都精華学園には、絶対的なエースやスター選手はいない。昨年度は堀内桜花(シャンソン化粧品)、八木悠香(ENEOS)、ディマロ・ジェシカ(トヨタ紡織)という3人のスーパースターを擁し、どんな場面でも中心となるのは彼女たちだった。 そんな先輩たちが卒業したのにもかかわらず、今年度のチームがインターハイとU18日清食品トップリーグで優勝できたのは、ひとえに圧倒的なチーム力によるところが大きい。具体的には1~3年生までの全学年が一体となり、非常に層の厚いロスターを作り上げたこと、そして、そんな選手たちがディフェンス、リバウンドといった基礎を徹底したことだ。 ゆえに、今年度のチームにはキーマンと呼べる選手が何人もいるが、山本綱義コーチから「ディフェンスの要」と呼ばれる桃井優もその一人だ。 京都精華学園のメンバーの多くは付属中からそのまま内部進学してきたメンバーであり、内部生たちは全中やJr.ウインターカップで結果を残したエリートだ。外部から進学した選手がチャンスを勝ち取るのは容易なことではないが、桃井は現チームで唯一、1年時からスタメンを担っている。 中学時代は全国大会には出たことがない。なぜなら彼女が所属していた西ノ京中は京都府の学校。その行手を阻んでいた相手こそ、京都精華学園中だったのだ。そんなところから、中学卒業の数か月後にはスタメンとしてインターハイで優勝──桃井は当時から現在に至るまでをこう振り返った。 「中3のときはインターハイ決勝のようなすごいところに自分が立てるとは思っていなかったです。それに、入学前に精華の応援枠でウインターカップに行かせてもらったのですが、あの決勝のコートに1年後に自分が立つなんて考えられないことでした。1年生のときは先輩達に付いていって優勝させてもらった感じだったんですけど、今年は副キャプテンになって、(林)咲良と(橋本)芽依と一緒に頑張ってきて、そこに後輩たちも付いてきてくれました。その中でインターハイもトップリーグも優勝できたので、最後のウインターカップも責任を持ってチームに貢献できたらいいなと思います」 桃井自身も1年時から毎年できることを増やし、今ではチームの潤滑油的なポジションで攻防の起点になっている。印象的なマッチアップは1年時のインターハイ3回戦、桜花学園との試合で相手エースの横山智那美(トヨタ自動車)を彼女が苦しめたことだ。 「自分はシュートなどが特別うまいわけではないので、ディフェンスの面でしっかり言われたことを徹底しようと思っていました。横山選手を必死に止めようと、せめてディフェンスでは完璧に今やれることをやってやろういう気持ちでした」と、当時の桃井はがむしゃらに横山をスローダウンさせることのみにフォーカスした。 そこから桃井には守備職人のイメージが着き始めた。そして、2年時にはドライブと3Pシュートを安定して決められるようになり、今年は時にゲームメイクをこなすなど、ハンドラーとしての技量が上がった。彼女の貢献は派手ではないが、チームの根幹だ。 山本コーチは桃井との出会い、そして現在の貢献を次のように語る。 「彼女が中学生の頃に京都府の少年国体のメンバーに選んだんです。当時はオフェンス面のドライブなんかが面白いと思って選んだのですが、あの子はディフェンスの粘りや執着心が強かった。なので、あの子のディフェンスを引き立てて伸ばしていこう思って、本校入学後は多少のミスには目を瞑りながらチャンスをたくさん与えました。順調に育ってくれたと思いますし、今はディフェンスの要だと思っているくらいです」 試合に出るからには相応の責任が伴う。ましてや全国制覇を目指すチームには、内部だけでなく周囲からの期待も多い。自分を成長させてくれたチームにどう恩を返すのかと言われたら、やはりプレーだ。「大人数のチームなので、まずは試合に出るメンバーに選ばれるところからで、実際に試合に出るとなったときも責任感や、チームメイト以外のいろんな人からの期待を背負ってプレーしなければなりません。なので、一つ一つのプレーを丁寧にすること、やらなきゃいけないことや指示を徹底することなど、副キャプテンとしてもそういう一つ一つに責任感が伴うので、結構プレッシャーもありました。でも、チームのみんなが支えてくれるので、責任感を持ちつつも思い切ってプレーできています」 仲間や応援してくれる人たちのために戦う桃井と、桃井が思い切って戦えるようにサポートする仲間たち。この関係性は、まさに今年度の京都精華のアイデンティティーである「チーム一丸」そのものだ。 夢のような京都精華デビューから3年。仲間と優勝を目指す桃井の最後の冬が、まもなく始まる。
文/堀内涼(月刊バスケットボール)