自転車用ヘルメット着用率、徳島は18.2%と浸透せず トップ愛媛69.3%、高校校則で義務化など取り組みに差
2023年4月施行の改正道交法で、自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務となった。徳島県内ではこれに先駆けて16年施行の県条例で努力義務としているが、浸透はしていない。今年7月に全国の警察が行った調査で、徳島の着用率は18・2%(前年同期比0・2ポイント減)にとどまる。都道府県別で最高だった愛媛(69・3%)とは大きな開きがある。大分(48・3%)、群馬(40・4%)を含む上位3県と比べると、高校生の着用を巡る取り組みに違いが見られた。 酒気帯びで自転車、検挙の男性不起訴 徳島区検、嫌疑不十分
上位3県の県警は、着用率が比較的高い理由の一つに「条例制定などに合わせて高校で着用を制度化する動きが広がったこと」を挙げる。 愛媛県は13年7月施行の県条例で着用を励行事項とした。15年7月に全ての県立高校で自転車通学時の着用を校則で義務化し、合わせて生徒約3万人にスポーツタイプのヘルメットを無償で配った。新入生への購入補助も実施し、17年までに私立、国立を含む全高校が校則で義務付けた。
県独自の調査では16年に高校生の着用率が前年から急激に上がり、その後も高率をキープ。全体の着用率も高まった。県警交通企画課は「ヘルメットを無償提供して以降、かぶって通学する生徒の姿が自転車利用者全体の意識に大きな影響を与えた」とみる。 大分県では21年4月施行の県条例で自転車通学時の着用を努力義務とし、同時期に県教委が県立高と特別支援学校で義務付ける方針を決定。各校が着用を通学の許可条件にした。群馬県でも同年4月の県条例改正で努力義務としたのに合わせ、自転車通学の許可条件に盛り込む高校が増えたという。 3県では制度化に前後して、自転車の高校生が死傷する交通事故が起きた。学校や保護者から着用推進を求める声が上がり、制度作りの機運が高まった。 愛媛県では14年、県立高校の生徒が死亡する事故が2件相次いだ。ヘルメットをかぶっていれば助かった可能性があるとされ、校長会やPTAからも着用推進を求める声が上がった。無償配布では県教育振興会と県が費用を負担した。 大分県では18年、通学途中の高校生が車に追突され、脳挫傷で意識不明の重体になった。県教委は19、20両年度に県立高校で自転車通学の生徒を対象にモニター事業を行い、上限5千円の報償費を支給してヘルメットの購入を促した。20年3月には県PTA連合会が着用や保険加入を条例で定めるよう求める要望書を県に提出した。 群馬県では18年1月に通学中の高校生2人が死傷した事故が起き、条例改正につながった。民間の調査で14年以降、高校生の自転車通学時の事故件数(1万人当たり)で全国ワーストが続き、県民の関心も高かったという。 14年12月1日、松山市内で自転車に乗って下校していた高校1年渡邉大地さん=当時(15)=が横断歩道でトラックにはねられて死亡した。 渡邉さんは高校入学前に通学用の自転車を購入する際、店で気に入ったヘルメットを試着していた。父明弘さん(55)は1万円以上するヘルメットを高いと感じ、「自分もかぶっていないし、自転車で事故に遭ったこともない。『(自転車と)一緒に買おうか』と言ってやれなかった」。この事故は、県立高校で着用が義務化されるきっかけの一つになった。 徳島県内では、自転車の高校生が絡む死亡事故は近年起きていない。明弘さんは「大地が事故に遭う前の私と同じ感覚の人が一定数いるのかもしれない。子どもの命とヘルメットのどちらの価値が重いか、天秤にかけてみてほしい」と訴える。 その上で「愛媛の場合は2人の生徒の命をきっかけに、子どもから着用率が高まった側面はある。しかし本来は大人がかぶって正しい姿を見せ、広がっていくのが望ましいはずだ」と語った。