スワップスプレッドに縮小圧力、日銀の国債買い入れ減額懸念を反映
(ブルームバーグ): 日本銀行がインフレ目標に対するコミットメント(公約)を弱めるのではないかとの観測が広がる中、投資家は日銀による国債買い入れのさらなる削減を警戒している。
日本の10年物国債はオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)対比で19カ月ぶりの割安水準となった。こうしたスワップスプレッドの縮小は、日銀の買い入れ削減により債券の需要が減少するとの見方を反映している。市場がマイナス金利の解除を完全に織り込む中、日銀の金融緩和政策の他の部分に変更が加えられる可能性に投資家の注目が集まっている。
生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年比上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースを拡大し続けることを約束する「オーバーシュート型コミットメント」の下、日銀は国債の大量購入を続けてきた。
国債市場をゆがめているとの懸念から、日銀は発行高の半分以上を占める国債保有残高を減らそうとしているが、そのためにはオーバーシュート型コミットメントを変更するか放棄する必要がある。コアCPIは22カ月連続で2%以上の伸び率を維持しており、公約の必要性も薄れている。
三菱UFJアセットマネジメント戦略運用部の加藤章夫シニアマネジャーは、日銀が3月か4月にマイナス金利を解除する際に「マネタリーベースをどうするかが一つ大きなテーマになっている」とし、国債買い入れ減額に向けてオーバーシュート型コミットメントを撤廃し「マネタリーベースを減らすかもしれないという思惑がスプレッドのタイト化に表れている」と指摘する。
日銀による資金供給量を示すマネタリーベースは2021年以降、拡大ペースが鈍化し、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの終了で縮小した時期もあった。日銀の毎月の国債買い入れ額も過去最高となった23年1月の23兆7000億円から、13年4月に量的緩和を大幅に拡大して以降のレンジの下限5兆円程度に減少している。