警察庁、全国の情報通信部に訓練徹底指示 能登地震教訓に災害時の通信環境維持狙う
年明けで1年となる能登半島地震の教訓を生かそうとする動きが警察でも広がる。地震では、被災状況や救助活動の「情報」を警察官らが共有するための無線や映像のやりとりに欠かせない「無線中継所」の機能を死守しようと、石川県の技官が奮闘。一つも機能不全を来すことなく、情報を寸断させなかった。日ごろの訓練の成果が功を奏したとされ、警察庁は全国の情報通信部に訓練の徹底を指示した。 ■インフラ打撃で救助に支障 能登半島地震ではインフラが打撃を受けた。経済産業省によると、配電設備の損傷で、最大約4万戸が停電したが、各地で土砂災害やがれきで道路が寸断され、復旧作業は難航。北陸電力は電力各社などの応援を得て、連日千人規模で対応したが、復旧に1カ月以上を要する地域もあった。 石川県内にある警察の無線中継所も数や場所は非公表だが、停電の影響を受けた。中継所が機能停止に陥ると、無線が使えず、映像も送れなくなるため、被災状況を把握できなくなり、救出救助活動にも支障が出る。 停電時、中継所は非常用電源に切り替わるが、復旧が長引けば長引くほど燃料を要し、補給が欠かせない。能登半島地震では石川県情報通信部などの技官らがリヤカーに載せたり、ヘリから降下したりして、各中継所に燃料を運び、一つの機能不全も出さなかった。 ■教訓生かし実践訓練 こうした能登の教訓を生かそうとする動きも出ている。 東京都警察情報通信部(都通)は警視庁と連携して4月から月1回のペースで、技官らがヘリでの降下に向けた訓練を実施。9月からは実際にヘリからの降下に挑んでいる。警視庁航空隊の渡邉洋平警部(47)は「ヘリの中は音が聞こえづらく、普段から意思疎通をしておくことが重要だ」と話す。 東京都立川市にある警視庁航空隊の立川飛行センターで今月5日に行われた訓練には都通の技官5人が参加。警視庁特殊救助隊員とペアを組みヘリと地上を往復する訓練に汗を流した。 参加した都通の田子至恩技官(25)は「高所での所作の習得に苦労したが、訓練を重ねて練度を高めたい」とし、都通の田浦善之機動通信第1課長は「想定外を最小限に抑えることを想像し現場対処能力の向上を図りたい」と強調。特殊救助隊の山﨑健二警部補(47)は「それぞれの部隊ができることをやることがよりよい救助活動につながる」と話した。