えげつなくて切ないM誕生の裏側『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
小さな田舎町のハンバーガーショップが、いかにして世界最大のファーストフードチェーンになり得たのだろうか? 「マクドナルド」のファウンダー(創業者)として、ビジネス界から尊敬を集めるレイ・クロック。7月29日公開の映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』は、レイの億万長者への輝かしい道筋だけでなく、これまで光が当てられることのなかった、“ある兄弟”の視点を取り入れ、ダークな一面にも触れた作品となっている。
うだつの上がらないセールスマンを高みに押し上げた運命的な出会い
戦後、好景気に沸く1954年のアメリカ。シェイクミキサーのセールスマン、52歳のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、その気もない客に向かっていつもの決め台詞で熱く畳み掛ける。 「供給を増やせば、需要が付いてくるニワトリと卵の論理です。明晰で前向きな人だからいい話だと分かるはず。さあ、どうします?」 来る日も来る日も空振り続き。契約もうだつも上がらないレイのもとにある日突然、たった一つの店舗からミキサー6台の注文が入った。電話で確認をするとさらに2台の追加注文を受けた。注文主は田舎町でハンバーガーショップを経営するマック&ディックのマクドナルド兄弟。レイは車を走らせ、二人に会いに行く。 現地に到着して、まずは行列をなす店頭を見て驚いた。注文してから30秒、皿も飲み物用のグラスもなく、テーブルも椅子もなく、ウエイトレスもいないテイクアウトのハンバーガーショップだった。コストを削減しながら高品質を保つという革命的な画期的システムで客を待たせることなく商品を次々に提供していく。 欲はなく創意と工夫と誇りで、ハンバーガーを作り提供してきたマクドナルド兄弟。かたや彼らの店に千載一遇のチャンスを見出して、兄弟にチェーン展開の話を持ち掛け、ビッグなビジネスを築こうとたくらむレイ。最初は懐疑的だった二人を説得し、協力関係がうまくいって、アメリカン・ドリームを実現する展開と思いきや、両者の思惑は食い違い対立してしまう。