「出費だけが増えている」…物価高騰の恩恵受けぬ地方経済、選挙の度に言葉躍る「地方活性化」はどこに
27日投開票の衆院選に合わせ、鹿児島県内で浮き彫りとなっている課題について現状を探るとともに、県内4選挙区に立候補した12人の考えを聞いた。(衆院選かごしま・連載「論点を問う」④より) 「年金額はほとんど変わらず、出費だけ増えている。物価高の影響を一番受けているのは社会的弱者なのに国は見て見ぬふりだ」。鹿児島市営住宅に妻と暮らす男性(73)は、家計簿の前でため息をついた。 高校卒業後、首都圏の大手企業に就職したが、長男だったこともあり4年後に帰郷。営業職やバス運転手として63歳まで働いた。受け取る年金から介護保険料などを差し引いた額は、妻の分も含めて月に十数万円だ。 肉を買う回数や外食を減らして消費を抑える。それでも数年前と比べて食費は月2万円ほど増えた。燃料費の高騰を受け、市外に車で出かけることもほとんどなくなった。 男性は今もパートで働くことができており、「自分たちはまだいい方だ」と受け止める。収入が年金だけの高齢者には、猛暑日が続いた今夏をクーラーなしで過ごした人もいる。
パートの時給は9月まで950円だった。衆院選では物価高対策として最低賃金の1500円への引き上げを訴える政党もあるが、懐疑的だ。「もともと県内の給料は低い。本当に可能なのだろうか」 ■ ■ ■ 物価高の原因の一つには円安がある。円安は輸出をする大企業にとっては有利だが、県内に多い中小企業や農家には輸入する原材料や肥料のコスト高が不利となる。2024年春闘での平均賃上げ率は大企業は経団連の集計で5.58%だったのに対して、中小企業は日本商工会議所の調査で3.62%にとどまる。 地方と都市部の給与差も課題だ。厚生労働省の23年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の月額賃金は最も高い東京都は36万8500円。鹿児島県は26万8300円で、約10万円の差があるのが現状だ。 鹿児島大学の石塚孔信教授(64)=地域経済学=は「物価高は円安を進めてきたアベノミクスの影響もある。大企業や大都市優先の経済政策のひずみが出てきているのが現状」と指摘。「地方の所得向上には、中小企業の支援強化や農家の所得保障の充実といった大胆な経済政策の転換が必要」と訴える。