高圧的に怒鳴る、命令する指導者は時代遅れ? ビジャレアルが取り組む、新時代の民主的チーム作りと選手育成法
「『考える』は、『問う』から生まれます。だから…」
――選手に主体性を求めるけれど、土台を築く時間も必要だってことだね。二階建てなのに、一階に柱が一本しかない家なんてないものね。 L:おっしゃる通りです。監督が自分のやり方はこうだからと、無理に押し付けてチーム作りをしてもうまくいきません。私はこういう人間でこういうやり方でチームを作るという理想はある。けれども目の前にいる彼らがどんな状態で、何を必要としているのか。それをまずはしっかりと把握をすることが大事なのです。そこから自分たちのアプローチの仕方やアクションプランを立ててチーム作りをしてほしいと思います。 ――日本の指導者にとって示唆に富む話だと思う。ありがとう。そうやって、ビジャレアルの指導者たちも随分変わってきたよね。 L:この10年、うちの指導者は、まさに民主的なチーム作りをしてきたと思います。全員が何を言っても大丈夫な安心安全な空間作りをし、主体性を磨き上げました。それを当然なものとして選手も育っています。高圧的で指示命令型の指導者像、つまり怒鳴るとか、強制するとか、命令するようなコーチ、監督がいない場所で、彼らは育っています。トランスフォーメーションによる恩恵を受けた、新時代の子どもたちです。 ――従順な選手から主体的な選手の変容は、新時代に向けたAX(オートノミー・トランスフォーメーション/自主的な変容)とも言えるね。まさしく新しい時代の選手の中から、新しいスタイルの指導者が出てくるんだろうね。 L:そんな文化が構築されたら嬉しいですね。どの時代になっても、「考える」は、「問う」から生まれます。だから選手に対して問いを立て続ける。そんな時間の投資が必要でしょう。最初は自分で考えたりできず迷子になるのですが、そこに時間を注ぎ込めばその先に必ず良いことが待っています。それはすなわち、良いチームや良い指導者を育てる投資でもあります。そこを大切にできるビジャレアルというクラブを、私は誇りに思います。 (本記事は竹書房刊の書籍『本音で向き合う。自分を疑って進む』から一部転載) ※次回連載記事は10月4日(金)に公開予定 <了>