「今日の小さな選択が、10年後の自分を作る」料理家・有元葉子さん
\実は料理家デビューはLEEでした!/ 気づいたときが始めどき 有元葉子さんの「10年後の自分を豊かにするコツ」
多くの女性たちの料理と暮らしのお手本として、長年活躍している有元葉子さん。実は、料理家としてのキャリアをスタートしたのは40代半ば、そしてLEEの取材がきっかけだったとご存じですか? そんなLEEとご縁のある有元さんに、多忙だった子育て時代のことから、今、年を重ねてもしなやかに輝き続ける秘訣まで、じっくり伺ってきました。
お話を伺ったのは
●有元葉子さん YOKO ARIMOTO 料理家 3人の娘を育てた専業主婦時代に、家族のために作る料理が評判となり、料理家の道へ。素材を生かしたおいしい料理だけでなく、洗練されたライフスタイルも人気を集め続けている。東京・田園調布で料理教室「COOKING CLASS」を主宰。『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』(SBクリエイティブ)など著書多数。
今日の小さな選択が、10年後の自分を作る。そう思って毎日を過ごしてみてくださいね──YOKO ARIMOTO
料理の撮影を終えて、ひと息。キッチンを片付ける様子も、お茶をいれる姿勢も美しい有元さん。こういった意識のすべてが、研ぎ澄まされた料理の味につながっている。
自分の暮らしが先にあり、それが仕事という形になる
有元さんの言葉でさらに印象的だったのが、「普段していることしか、やらない」というルール。つまり、雑誌や本の企画のためだけに料理や暮らしのアイデアを考案することはしない。普段の自分の暮らしが何よりまず先で、本や雑誌で紹介するのは、後から結果的に……という順番です。 「例えば『子育て時代に助けられたレシピを教えてください』と言われても、いわゆる子ども向け料理は作ったことがないんです。食べにくい薬味を除くなどの工夫さえすれば、大人と同じものを一緒に食べればいいと思っていて、わが家では実際にそうしてきました」 ちなみに「子育てで大切にしたことは?」と尋ねると、「とにかくごはんを食べさせただけ」と有元さん。そのほかのことをしてやる余裕はなく、「~しなさい」と言ったこともなし。ただ食べて寝て、安心できる家庭という場を作ることだけには努めていたと言います。 「そもそも私自身が『やりなさい』と言われると、やりたくなくなるタイプ。料理にしても『作らなきゃ』という責任感ではなく、自分が好きだから作っていただけのこと。それでも料理は体内に入り、身体を作っていくから、やはりすごいですね。食卓を囲む中で、言葉にしなくても伝わることがいろいろとあったのかもしれません」 「自分らしく生活すること」が、仕事につながり、いただいた仕事には全力で取り組む。その繰り返しが、有元さんの歩んだ道でした。そんな道のりの断片は、今回の撮影中にも窺えました。1品料理が出来上がると、次の料理までに瞬く間に片付けを終えている。撮影場所を決めるために少し待ち時間ができれば、「気になったから」とオーブンのふき掃除を開始。調理台に向かう姿は、常にすっと背すじを伸ばして姿勢よく。一つ一つは小さなことですが、それでも「自分の力を常に惜しみなく出し切ること」が垣間見えました。 「料理に使う食材もキッチンで使う道具も、存分に使い切ると気持ちがいいでしょう。自分自身も同じ。自分も『十分に使い切った』と思えるようにして、人生を終えられるといいですよね」 有元さんの人生にも、思いどおりにならないことが多数あったと言います。けれど周囲や状況をコントロールすることは難しい。できることは、毎日の暮らしを自分なりに快適に、工夫しながら楽しくしていくことだけ。自分が惹かれるもの、内側からあふれる思いに蓋をせず、やりたいことをコツコツと続けてきた結果が、今の活躍と輝きにつながってきたのです。 「毎日の小さな選択が、未来の自分を作ります。今日何を食べるか、今日どんな暮らしをするか、その積み重ねが10年後、20年後の自分に大きな差を生み、生きるうえでの自信にもなるはず。忙しい30代・40代では余裕がないかもしれませんが、そう気づいたときから始めればいいと思います」