大学時代は年間6000冊を読破!寸暇を惜しんで読書に勤しんだ大藪春彦賞作家が本を読めなくなった背景にある「寄る年波」【「鶯谷」第二十六話#1】
卒論執筆のアルバイト
居直るわけではないが、味わえない。 私の読書法は変わっている。 添削するように読むのだ。 語尾や接続詞や副詞や、あるいは文書の構成自体を、 「自分ならこう書くのにな―」 と、考えながら読む。 もちろんそれは著者を否定するだけではなく、感心する場合も多くある。 「これはうまい表現だな」 「この書き方は自分にはできないな」 「ここで改行するのか」 などと感心しながら読んで執筆の糧にするのだ。 (それだったら1日16冊余りも読めないでしょ! ) 読者諸氏のご指摘が聞こえそうであるが、思い出して頂きたい。 それだけ読んだのは大学4年生の時なのだ。 当時卒業に必要な科目をほとんど終えていた私は、卒業論文の代書を請け負った。 アルバイト感覚ではなかったが謝礼は受け取った。 評価が『優』ならば10,000円、『良』ならば5,000円、『可』と『不可』は無料という取り決めだった。 不正だと思わないで頂きたい。 若気の至りだと失笑して頂ければ幸いである。 提出した卒論は自分の物も含め5人分だった。 それだけの卒論を書いたのだから6,000冊を読んだこともご理解頂けるのではあるまいか? 幸いにして他の学生の評価は『優』か『良』であったが、最後に作成した私自身の卒論は辛うじて『可』と評価された。 (バチが当たったんだよ) そう思われても仕方がないが、すでに内定が決まっていた私にとって評価などどうでも良かったのだ。 それほどの読書家であった私が本を読めなくなった。 後編記事【読書よりもYouTube…重度の不眠症に悩む大藪春彦賞作家が直面する「金詰りの暮らしの不安」】に続きます。 赤松利市氏の最新刊『あじろ』が絶賛発売中です
赤松 利市(作家)
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