花王vs物言う株主オアシス トップ人事で早くも暗黙のプレッシャー
花王の経営改革に遅れ
さて、花王とオアシスの攻防も同じように、①収益の改善策提案→②経営層の人事案でプレッシャー→③業界再編の模索、という流れになるのだろうか。オアシスは相手の反応を見ながら、株を買い増すかどうか見極めるだろう。 1つ気になるのは、現在の提案で真っ先に指摘されている「化粧品およびスキンケアブランドの国際成長」だ。花王は連結決算だと23年12月期の売上高が1.5兆円で、コア営業利益率は7.5%。しかし、化粧品事業は売上高2386億円、コア営業利益率2.2%にとどまった。洗剤「アタック」や「キュキュット」を抱えるハイジーン&リビングケア事業(売上高5225億円、コア営業利益8%)と比べ、化粧品事業は収益ともに小さい。 この点は市場からも批判の的となってしまった。抜本改革を迫られたが、「改革のスピードが競合に比べて遅い」(複数の証券アナリスト)との評価が花王の株価を押し下げている。 例えば資生堂は21年2月に発表した中期経営計画で、非中核事業を売却して新型コロナウイルス禍でも需要の見込めるスキンケア製品に軸足を移すと表明。同年7月にはヘアケア製品「TSUBAKI」などの日用品事業を売却した。中国向けスキンケア製品強化のため、EC(電子商取引)販売への投資もこの頃から本格化させた。花王も手は打っているが、スピードで後れを取っている感は否めない。 フィッシャー氏は「コア事業ではなく、規模も劣るブランドはおそらく売却すべきだ。もし買い手がつかないなら撤退すべきだ」と語っている。 こうした弱点を早期に克服しないと、株主に責め立てられる。それを避けようと海外競合他社との事業統合などを選ぶなら、やはり株主の思惑通りかもしれない。それでも、まともに返答しなければ圧力が増すだけなので、真剣勝負が求められる。
小太刀 久雄、朝香 湧