ただの文化財展示ではありません 遺跡から着想得た写真と土器・石器の展示を空間アートにする試み
長野県などは、中野市の写真家、高木こずえさん(39)が同市内の弥生遺跡から着想を得た作品と、関連の土器や石器を融合した展示を県立美術館(長野市)で始めた。展示会場に作品を投影するインスタレーション(空間芸術)の手法で、現代アートと考古資料を組み合わせた異色の試み。県文化振興課の職員は「一般的な文化財の展示とは全く角度を変え、アートを主にして新たな価値を創出する試み」としている。 【写真】壁に投影された写真作品と展示された火焰形土器
展示の中心は、中野市の千曲川流域で発掘された琵琶島遺跡から着想した2012年の作品「琵琶島」。発掘現場で見られる地層をイメージし、遺跡の写真を含むスナップ写真計約300枚を積み上げるように組み合わせた。高さは12メートルあり、母校の東京工芸大(東京)に飾られている。県立美術館では作品をプロジェクターで壁面に投影する。
考古資料は、琵琶島遺跡出土の壺(つぼ)形土器など県埋蔵文化財センター(長野市)や県立歴史館(千曲市)の所蔵品を展示。土器片がばらばらに出土する様子を再現した他、磨製石斧(せきふ)の製作過程が分かるようにした。
今回は中央日本4県(新潟県、長野県、山梨県、静岡県)の交流や地域性に関わる歴史文化をテーマに、文化財を通じて各県の魅力を発信する事業の一環で、会場には新潟県との交流を示すひんご遺跡(栄村)出土の火焔(かえん)型土器や翡翠(ひすい)も展示。13日にはアートや考古学にちなんだワークショップがあり新潟、静岡、山梨各県のブースも出展する。
18日には「いにしえの人と心」と題したトークセッションを実施。高木さんと、考古学者の高橋龍三郎・早稲田大名誉教授(大町市出身)、笠原美智子館長が出演する。展示は19日までの午前9時半~午後4時半(8、15日は休館)。