「直球は160km、でも甲子園は1回戦負け、進路はMLB公言」…高校生・大谷翔平を人気漫画のスカウトはどう評価する? 作者が語る大谷「漫画超え」問題
「二刀流」のまま説得した日ハムのすごさ
「たぶん『ドラフトキング』の作中に大谷選手がいたとして、大谷選手を投手として獲るなら、郷原でもこういった形での説得は考えたと思います。投手だったらNPBで結果を出せばMLBでも高い評価をもらえますし、マイナーリーグを経由しなくてもメジャー契約を勝ち取れる可能性が高い。 取材をしていても感じますが、いまはMLB流の“身体の作り方”もだいぶNPBに降りてきている。それならMLB向けのフィジカルを5年以内に作って、着実に日本で実績を残せば、球団としても選手本人としても色んなリスクを下げられ、金銭的にも美味しい。敏腕スカウトならそんな風に考えて説得する可能性は十分ありますね」 その一方でクロマツさんは、「これが野手となると話は全然、別になってくる」と言う。 高校時代の大谷は、外野はもちろん練習試合ではショートの守備につくこともあり、打者としての能力を優先するならば内外野問わない起用が十分にあり得る状況だった。 「特に内野手だとアメリカはほとんどが天然芝の球場で、日本の人工芝とは環境が異なります。人工芝はイレギュラーがないですし、打球速度も全然、違う。そうなると、少なくとも守備の面では日本で成果を残してもMLBから評価してもらえない。じゃあとんでもなく打撃で活躍するしかないわけで、そうなるとそれはそれでハードルが非常に高い。 であれば、マイナーであろうとなるべく向こうに早く行って、“慣れる”ことが一番の近道でもある。だからもし僕が作中で『MLBが志望です』という内野手のキャラクターを出すとしたら、郷原は獲らない可能性が高いでしょうね。選手によっては『君にMLBは無理だけど、NPBのトップにならなれる』と説得するかもしれません。NPBでの頑張りが、そのままMLBに繋がっていると言いきれない部分がありますから」
大谷選手を「口説いた球団もフィクションみたい」
前例のある内野手ですらNPBとMLBとの間には、客観的に見ても大きな溝がある。 ましてや二刀流など当然、近代野球に前例はない。今でこそ当然のようになっているが、NPBに入ったばかりの頃は大谷選手にも懐疑的な意見も多かった。だからこそ、未来の二刀流でのMLB挑戦を前提に日ハムが大谷選手を説得したのは衝撃でもあったのだ。 「一応リアル路線の漫画を描いている者としては、そういう意味で大谷選手本人はもちろん、実はそれを口説いた球団もフィクションみたいなことをしているなと思います(笑)。こんな説得の仕方、漫画で描いても『そんなことするわけない』って却下されてしまう」 結果的にそんな球団側の描いた夢物語を実現し、いまではMLBでホームラン王とMVPまで獲得してみせた大谷選手。クロマツさんのような野球漫画家にとって、その存在はどんなものなのだろうか。
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